漢江ルネサンス・プロジェクトは、2007年から2030年にかけて行われる長期事業で、漢江を中心とするウォーターフロント・タウンの造成など8大課題を掲げ、進められている。その概要を、張正愚・漢江ルネサンス事業本部に話を聞いた(東京本社・李相兌)
―漢江ルネサンスを企画した理由は何ですか?
未来都市の競争力は都市のブランドから出てくる。ソウルもブランド価値を高めるべきなのに、「ソウル」で浮び上がるイメージがないのが現実だ。例えばシドニーは「オペラハウス」、ニューヨークは「ブロードウエイ」や「自由の女神」がある。
ソウルの代表ブランドになる可能性がある資源として、ソウルの自然的なランドマークである「漢江」に注目した。世界でも漢江のように川幅が広く、豊富な水量の河川が都心を横切る景色は珍しい。特にソウルを訪問する外国人らも「都心にこんな大きな川があるのに驚いた」という声をよく耳にする。
ところが漢江の管理が適切であったかというと決してそうとは言えなかった。私たちは今一度、漢江の存在を見直し、20年後を見通した長期的な計画を立て実践することにした。
―事業の概要と進捗状況は?
漢江ルネサンス・プロジェクトは、漢江とソウルの未来ビジョンまでを包括する長期的事業であり、持続性を前提に、漢江全体やその周辺を含む総合的な空間計画だ。
私たちはマスタープランにしたがい、ソウル市は、漢江中心の都市空間構造の再編、ウォーターフロントタウンの造成、漢江沿いの景観改善、西海連結舟運基盤の構築、漢江中心のエコネットワークの構築、漢江へのアクセス性の改善、漢江沿いの歴史遺跡との連携強化、テーマ別の漢江公園の造成などを実現課題としている。
漢江ルネサンス・プロジェクトは、2030年までの計画で、現在は2010年まで予定された第1段階の事業が進行している。
市民の憩いの場として漢江の自然を復元する事業は、漢江の水辺景観を害するコンクリート護岸を四季折々の草花が咲く環境、やさしい空間に変える計画だ。
川沿いに位置する12カ所の漢江市民公園をそれぞれの立地を考慮してテーマ別に特性化し、それに相応しい文化・観光基盤施設を段階別に造成する。2014年まで総長82㌔㍍の岸辺のうち、72㌔㍍を対象に工事が行われており、現在21㌔㍍まで完了した。
文化基盤造成事業は、盤浦(パンポ)・汝矣島(ヨイド)・暖地(ナンジ)・纛島(トゥクソム)漢江公園に対する水辺公園化事業が、2009年10月に完了した。これにより市民の公園利用度が高まった。
また、漢江市民公園へのアクセス性を改善し、公共交通手段を利用する場合でも訪れやすいようにする。まず、楊花(ヤンファ)大橋・麻浦(マポ)大橋・漢江(ハンガン)大橋・銅雀(トンジャク)大橋・漢南(ハンナム)大橋を対象に、各橋の車線のうち一車線を歩行空間として整備し、橋の南・北端にはバス停を設置して、バス下車後、橋を歩いてエレベーターや傾斜路を利用して漢江市民公園へ行けるようにする。
―プロジェクト推進で考慮した点は何ですか。
漢江ルネサンスの目的は、漢江の生態・歴史・文化を再生させて、新しい水辺文化を創り出すことにより、ソウルの都市ブランドを高めることだ。
その中でも生態系の再生は長期的プランをもって最も力を入れている。
漢江は過去の開発過程で、生態系を犠牲にした経緯がある。
過去の教訓を生かして事業に取り組むことにより、絶滅危惧種貴重種リスト2級種のチョーセンヤマネコが漢江のほとりで発見されるなど、生態系の個体数が徐々に増加していることが明らかになった。
―観光客誘致のためにどんなプログラムを企画中ですか?
漢江公園で、生態プログラム、文化・芸術プログラムを年間を通して催しており、ランドマーク型建築物も造成中だ。
「昔の思い出の遊園地」というテーマのもと、アミューズメント・パークを造成している。
永東(ヨンドン)大橋と蚕室(チャムシル)大橋の間に、音楽噴水や四季プールなどの余暇活動空間、自然型湖岸など多彩に構成する。
生態の復元を土台に新たに生まれ変わる、環境にやさしい水辺空間である纛島漢江公園には、水辺舞台を設置する。この舞台は、大規模な文化イベント、野外公演、映画上映など、多様な文化活動空間として利用される予定で、音楽噴水ショーも鑑賞できる。
また漢江流域で、音楽堂をはじめとする各種文化施設の整備や、ライトアップ等を通じた景観の創出、接近路の整備、渡江交通の確保などを計画している。将来的には、上海や青島まで航路をつないで、東北アジア観光の中心にしたい。
―漢江ルネサンスによりソウルはどう生まれ変わると考えますか?
漢江ルネサンスはハードウェアを新しく作って拡充していくことではなく、漢江の自然、文化、歴史の回復と、新しい文化が融け合った新しいソウルの個性、文化、市民生活を実現することだ。
したがって、20年後に市民たちが最も自慢することができる漢江に変貌させたい。漢江がロンドンのテムズ川やパリのセーヌ川のように、世界的にも有名な名所になり、ソウルのブランド価値を高めていくように努めるつもりだ。