◆日本企業は韓国企業に完敗か◆
韓国の企業は日の出の勢いであるが、日本の企業はいま一つ元気がない。これが多くの人々が抱く印象であろう。韓国企業の会計年度は12月までなので、すでに2010年度の業績が出そろっている。そこで今回は企業の営業利益に焦点を絞って日韓比較を試みたい。2010年度の業績を見ると、韓国では営業利益が1兆ウォンを超える企業が20社を超え、過去最高を記録する企業も多かったなど、概して好調な数字となった。そのなかでもサムスン電子の営業利益は他社を大きく引き離した17兆3000億ウォンと別格であるが、日本にここまでの利益を稼ぎ出せる企業があるか見てみたい。日本企業の会計年度は3月までであり、2010年度の業績は出ていないが、2010年一年間の数字は出るのでこれを比較対象とする。また企業分析では利益の絶対額を比較することは一般的ではなく、総資産額などで割った数値を使うことが多いが、保有資産も含めた総合的な企業の力を見るため、ここでは敢えて利益の絶対額を見ていく。
さてサムスン電子はソニーと比較されることが多いが、サムスン電子の営業利益は日本円に換算すると1兆3000億円、ソニーは2000億円であり、その差は歴然としている。ただしソニーは電機大手8社のなかでは5位に過ぎず、最高の利益を得た日立を見ると5000億円で、やはり太刀打ちできない。それどころか、上位5社の営業利益を合計してようやく1兆5000億円なので、束になって勝負になるといった状況である。さらに日本のお家芸である自動車のトヨタも5000億円であり、昨年の営業利益で比較するかぎりでは、韓国企業が日本を大きく上回っていると言える。
ただし昨年のサムスン電子の営業利益は、半導体のメモリー価格が旺盛な需要を背景に高水準で推移するなど、まさに追い風のもとでの数字であり、17兆ウォンのうち10兆ウォン以上は半導体部門が貢献した。しかし半導体部門の業績は、シリコンサイクルによって大きく左右される。新しく開発されたメモリーは、需要拡大→価格上昇→大規模投資→生産過剰→価格暴落とのサイクルを描く。そしてメモリーが高値のうちは高い利益を期待できるが、価格が下がると利益どころか損失を出しかねない。つまり半導体部門はもろ刃の剣であり、昨年のように好調であれば企業全体の利益を大きく押し上げるが、どん底に落ち込むと足を引っ張りかねない。
そこでサムスン電子の真価は、半導体を巡る環境がどん底であった08年の数字を見てこそ測ることができる。この年におけるサムスン電子の営業利益は5000億円であり、10年と比較すると見劣りする水準である。
しかし08年はシリコンサイクルが底であっただけではなく、リーマンショックの発生による世界景気の悪化の影響により、日本企業の営業利益も軒並み減少した。具体的にはソニーや東芝など大手電機8社のうち4社が年度ベースで赤字となり、トヨタでさえ赤字を記録した。
そのような中でも、サムスン電子は営業利益が出ており、逆境にも強い企業であることが分かる。そしてこの背景には半導体以外にも通信機器や液晶など稼げる部門を持っていること、半導体部門も低コストで製造できるため、少々価格が下落しても利益が出ることがある。
このようにトップ企業の比較では、韓国が日本より優勢と言える。しかし韓国では一部の大企業に政府が資金を集中させた歴史がある。よってトップ企業は大きくてもそれ以外の層が薄い可能性がある。そこでマクロで見た企業の収益も比較する。全企業の収益は、日本の「法人企業統計調査」、韓国の「企業経営分析」から得られる。そこで製造業の営業利益を比較すると、09年では、日本が5兆9000億円、韓国が6兆4000億円と韓国の数字上回っている。つまりマクロの数字でも韓国企業が優勢である。名目GDPは日本が476兆円、韓国が85兆円と経済規模が5倍以上の差があるなかで、企業収益は日本が韓国に完敗しているのが現状である。多くの人が抱く日韓企業のイメージは数字でも裏付けられると言って良いだろう。