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2011/04/01

<トピックス>体質強化の契機に                                                                   日韓経済協会 西村 和義 元専務理事

  • 日韓経済協会 西村 和義 元専務理事

    にしむら・かずよし1931年ソウル生まれ。京都大学経済学部卒。三菱マテリアルを経て、菱金社長。日韓経済協会前専務理事、中国科学技術協会客員教授、三菱マテリアル社友。アジア問題について論文、評論多数。

  • 体質強化の契機に①

    宮城県仙台市で救援活動を行う韓国の救助隊

◆韓国の危機克服の経験に学ぼう◆

 3月11日の東日本を襲った千年に一度の巨大地震は、広範囲に記録的な破壊と大津波、更には福島の原子力発電所の大事故を誘発し、加えて計画停電も余儀なくされて、未曾有の壊滅と被害者を生んでしまった。

 いま日本政府と全国の国民はひるむことなく、前向きに克服すべく立ち向かっている。その中で、100国をはるかに超える世界の国々より、激励と支援の申し出を頂き、元気を頂くと共に、今日正にグローバル化の中で、一つの国で存在するのではなく、多くの国々との連携と友情の中で生きていることを改めて痛感させられた。

 とりわけ、隣国の韓国から、早速全国民の名でご丁重なお見舞いを頂き、翌日から大量の救援物資とともに、100人を超える緊急救助隊が派遣され、最も被害の大きい宮城県を中心に、瓦礫が重なる厳しい環境の中で救援活動が進められ、多くの生存者が発見救出された。また韓国内では、マスメディア、韓流スター、経済界、諸団体などで義援金募集が行われている。

 私の自宅にも、韓国の多くの友人たちから見舞いの電話を頂いたが、まず日本の国民の一人として、韓国政府と国民の皆様のご支援と激励に対し、心から深く感謝を申し上げたい。

 韓国も、振り返ればこれまで朝鮮戦争(1950)、深刻なアジア金融危機(1997)、米国発の百年に一度の金融信用危機(2008)など、幾多の甚大な危機に遭遇したが、見事にそれを乗り切ってきただけでなく、危機の都度に、韓国の持つ弱みを克服し、むしろ経済や産業の体質を強化してきた。

 特に印象的なのは、1997年のアジア金融危機である。私は、日韓産業技術協力財団専務理事就任の挨拶で、韓国の朴泰俊国務総理(初代の韓日経済協会会長)を訪問した折、「私が総理を受けた時、国家の金庫には借金と借用書だけだった。何としても、短期に韓国を建て直す」と強い意思を明らかにし、金大統領を支え、金融、産業の整理統合、財閥の改革、海外資本の積極導入、政府機構の整理、労働の流動性、ベンチャー企業育成など、強いリーダーシップにより、次々と思い切った改革を進め、V字型回復を示し、「第二の漢江の奇跡」を実現した。

 特に、当時ガソリンの節約のため、自動車利用を自粛し、地下鉄通勤に変え、ソウルの道路はガラガラの状況となっていた。また、外貨不足に協力し、国民が進んで金製品や手持ちのドルを供出するなど、国民一致した忍耐と愛国心に強く感銘を受けたことを昨日のように思い出す。

 既に、被災地では苦難に耐え、悲しみを乗り越え、絆を取り戻し、一歩一歩整々と力強い歩みを始めており、続々とボランティアの申し出も相次いでいる。特に、これまで内向きと言われてきた日本の若い人々が、家族や地域、そして人々の絆の大切さを実感し、前向きに役割を自覚し、行動するようになっていることは、明るい未来を感じさせてくれる。

 まだまだ、本格復興には長い時間が必要であるが、韓国のこれまでの危機克服の貴重な経験に学ぶことが多く、今後とも韓国の政府と国民の皆様には、引き続き暖かいご支援と見守りをお願いしたいと思っている。