韓国のR&D(研究開発)投資が年々増大しており、昨年には初めて40兆ウォンを突破した。だが、政府・公共部門の投資比率は先進諸国と比べて低く、民間大企業依存型となっている。政府はR&D投資を来年までにGDP(国内総生産)比5%に拡大する計画だが、目標達成のためにはより積極的な対策が求められそうだ。
国家科学技術委員会が発表した「2010年の研究開発活動調査結果」によると、昨年に韓国で使われたR&D投資は43兆8543億ウォンに達し、前年比15・6%の高い伸びを示した。このうち、大企業の投資は前年比21・2%の24兆2129億ウォンを占め、投資拡大を牽引した。
これに比べ、政府・公共部門の投資は12兆2702億ウォンにとどまり、R&D投資比率は民間・外国部門の31兆5846億ウォンの40%にも届かない。
韓国は全体R&D投資に対する民間・外国部門の比率が71・8%を占め、米国・ドイツ(ともに67・3%)、フランス(50・7%)、英国(45・4%)より高い。中国(71・7%)と同水準で、日本(75・3%)より低い。これから分かるのは、韓日中の東アジア3カ国は民間企業の方がR&D投資に活発であり、欧州は政府主導型ということだ。
ただし、国際的にみて韓国のGDPに占めるR&D投資比率はきわめて高い。昨年は3・74%に達し、前年より0・18ポイント高まったが、これはイスラエルの4・25%、フィンランドの3・84%に次ぐ世界3位のレベルだ。だが、絶対額で見ると、米国は韓国の10倍を超え、ドイツ、中国は2倍以上となっている。
R&D投資のうち、基礎分野のウエートは18・2%(前年18・1%)で、まだかなり低い。また、企業のR&D投資は製造業が87・6%を占め、サービス業は9%に過ぎない。
研究者の分布をみると、企業に勤務する研究者が22万6168人と最も多く、全体の65・4%を占める。次いで大学(27%)、公共研究機関(7・6%)の順。博士号を持つ研究員は8万1442人で、全体の23・5%を占めており、大部分が大学に属している。女性研究者は前年比12・9%増え、5万7662人にのぼる。
今回の調査は、全国の公共研究機関と大学、企業など2万9526カ所を対象に実施。81・2%の回答を得た。
一方、韓国産業技術振興協会が最近まとめた「日本の上場企業2123社の2009年度(09年4月~10年3月)R&D投資動向」によると、R&D投資上位20社の投資額は合計642億1399万㌦に達した。これは、韓国の上位20社の108億6100万㌦の5・9倍だ。投資額は依然として日本が大きいが、10年前の1999年度には日本が韓国の10・7倍だったのに比べ、その開きは大幅に縮小した。
同協会は「それでも日本企業は、R&D投資額や技術力などで先行している。韓国企業は最近、世界的な不況の中で善戦しているが、技術開発と品質改善を通じ日本企業との本格競争に備えるべきだ」と指摘している。
また、韓国のR&D投資は、電子分野に偏っている現実があり、投資先の多角化が今後の課題になっている。
韓国は01年に科学技術基本法を制定、R&D投資に本格的に取り組んできた。
08年2月に発足した李明博政権は、同年8月に第2次科学技術基本計画を策定、来年末までに国全体のR&D投資をGDP比5%(政府1・25%、民間3・75%)に拡大するという数値目標を掲げ、世界トップ7の科学技術大国をめざす方針を打ち出した。このGDP比5%は、世界的にも極めて高い数値であり、世界をリードする投資目標といえる。
この目標達成のため、主力基幹産業、新産業創出、知識基盤サービスなど7つの分野に重点投資する一方、人材、基礎研究、中小企業進行、研究インフラ高度化など7つのシステム改革に取り組んでいる。この重点投資とシステム改革の進展がどうなっているのか。中間評価が必要だろう。