◆2024年まで原子力発電依存度49%に◆
日本では一時、すべての原子力発電所の稼働が止まり、先月に大飯原発が再稼働した。そして2030年時点で原発にどの程度依存するかなどのエネルギー政策について、意見聴取会が始まった。
意見聴取会では、政府の「エネルギー・環境会議」が示した、3つのシナリオ、すなわち、2030年の原発依存度について、「ゼロシナリオ」(原発依存度0%)、「15シナリオ」(同15%)、「20~25シナリオ」(同20~25%)」をもとに、意見が出されている。
役所的に考えると、シナリオを提示した場合、落としどころとしては両端を外したシナリオが本命であることが少なくない。よって今回の例では15%程度を考えているのではないかと憶測するところであるが、いずれにせよ大震災前である2010年時点での26%よりは依存度を下げようとしていることは間違いない。そして世界に目を転ずれば、ドイツのように脱原発化を決めた国もある。
そのような中、韓国のエネルギー政策は、隣国日本で起こった、東電福島原発事故後も変わっていない。
韓国のエネルギー政策(電力)は、2010年12月に策定された「第5次電力需給基本計画」により進められており、計画期間は2024年までとなっている。そして、2010年の原子力依存度は31%であるが、これが2024年には49%と半分近くに高める計画である。また2024年までに49兆ウォンの設備投資がなされるが、3分の2以上である33兆ウォンが原子力発電施設に投じられ、14の原子力発電機が新設される。
そして、2012年3月1日現在では、新蔚珍原子力発電所で2機、新古里で3機、新月城で2機が建設中である。
このように、韓国の積極的な原子力発電推進策は継続しているが、経済的な側面から見るとメリットがある。韓国では1970年末には大部分を石油により発電しており、1981年では75%を石油火力に依存していた。しかし、その後、原子力や石炭火力による発電に急速に転換し、2009年には原子力34%、石炭火力45%となり、石油火力は3%に過ぎなくなっている。
韓国エネルギー経済研究院のノ・ドンソク博士によると、2010年における原子力の発電単価は、1㌔㍗時当たりで、原子力が40ウォン、重油が188ウォンである。韓国では1982年から2010年まで物価が240%上昇した半面、電力料金は19%しか上がっておらず、まさに物価の優等生であるが、この要因の一つとして、発電コストの安い原子力発電の依存度が高まったことが挙げられる(もちろん近年、政府が料金を総括原価以下の水準に無理やり抑えていることも理由の一つである)。
経済的なメリットにより、国民負担が減るとともに、産業界におけるコストも低下し競争力が高まるなど、現在のところ恩恵を受けているとも言える。
もっとも原子力発電のコストが低水準であるのは、事故発生時に発生する可能性のある被害額が算入されていないからとの声もある。そしてこれらを反映した場合には、コストが大きく跳ね上がる可能性があることが、東電福島原発事故の一つの教訓である。
しかし韓国においては、日本で事故が起きた後も、原子力発電推進策の是非が国民的な議論にはなっておらず、政府内でも淡々とこれまでの計画が進められている印象を受ける。日本と韓国は、お互いの成功例や失敗例を検証することで、新たな知見を得ることができる関係にある。結果として推進策を継続するとしても、韓国では日本で起こった事例を検証しつつ、原子力発電にかかるメリットとデメリットをしっかりと議論することが必要であると考える。