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2012/01/01

<トピックス>輸出鈍化、内需も役不足                                                       韓国経済研究院 金 昌培 主任研究員

  • 韓国経済研究院 金 昌培 副研究員

    キム・チャンベ 1963年、江原道原州生まれ。経済学博士(西江大学)。米メリーランド大学招聘研究員などを経て、韓国経済研究院副研究員。

  • 輸出鈍化、内需も役不足 

 2012年の国内外環境は、これまでになく不確実だ。最大の変数はユーロ圏の危機の行方であり、危機収拾の努力は続いているが、「山越え、また山」である。財政赤字をGDP(国内総生産)の3%内に抑え込むEU(欧州連合)条約の改正論議も、「主権侵害」問題で一部国家が反発するなど前途は厳しいものがある。

 基準金利の引き下げ、国債買い入れなどECB(欧州中央銀行)の積極的な通貨政策も、米国の第1、2次量的緩和政策のように効果が未知数だ。新興国及び途上国の場合も、先進国の需要に対する高い依存と金融緊縮の必要性などを考慮すると、成長鈍化が予想される。

 これらが韓国の輸出が今年は厳しくなると見る理由である。

 そうであれば、内需はどうか。今年度予算案を見れば、総支出増加率は5・5%で、総収入増加率9・5%より4ポイント低めに編成されている。財政健全性の回復に重きを置いた予算編成であり、成長支援政策とは言い難い。通貨政策の場合も、インフレ及び家計負債問題などで基準金利を容易に引き下げられる環境にない。内需が輸出鈍化の空白を埋めるには役不足であり、今年の成長率は昨年より低下する可能性が高い。

 民間消費は、家計負債利子負担、不動産市場沈滞、政策余力弱化などの影響で鈍化する見通しだ。就業者数も、景気下降の影響を受けて増加幅が次第に鈍り、民間消費は制約を受けるだろう。
 
 設備の鈍化傾向も継続する見通しだ。輸出と設備投資の高い相関関係を考慮すれば、輸出鈍化は関連産業の投資萎縮につながるほかない。市場金利の上昇見通し、それに総選挙、大統領選挙などの政治日程も企業の投資には否定的要素だ。

 建設投資は、不振な状況が続くが、昨年の沈滞に対する反動で増加率自体は改善する見通しだ。また、不動産景気の落ち込みが多少沈静化し、民間建設は制限的ではあるが回復の兆しが見られそうだ。だが、今年の社会間接資本予算の減少、韓国土地住宅公社など公企業の財政悪化、昨年の4大河川改修事業終了などの影響で公共建設の役割が縮小するのは避けられない。

 消費者物価上昇率は、今年は3%台中盤に下がる見通しだ。世界経済の鈍化、中東情勢の沈静化で原油価格上昇の勢いが落ち、世界市場でのドル下落、資本市場の外貨流出鈍化、経常収支黒字の持続などの影響でドルに対するウォンのレートは緩慢に切り上がることが予想される。

 経常収支黒字は、輸出より高い輸入増加率、サービス収支の赤字拡大などで昨年の231億㌦から今年は144億㌦に縮小することが予想される。対ドルレートは、米国の信用格付け引き下げ不安、超低金利維持、米景気回復遅延などで世界的にドル安が進行し、年平均で1㌦=1080ウォン水準となる見通しだ。