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2012/06/29

<トピックス>開城工業団地操業から8年、「将来に大きな可能性」

  • 開城工業団地操業から8年、「将来に大きな可能性」①

    かねだ・なおき 1946年大阪生まれ。本名・金徳吉。同志社大学中退。67年朝日建設工業社長就任。2011年4月金田事務所設立、代表就任。

  • 開城工業団地操業から8年、「将来に大きな可能性」②

    開城工業団地で働く北の女性労働者たち

 南北経済協力事業として進められている北朝鮮の開城工業団地が今年で操業から8年になる。同工団で働く北朝鮮労働者は5万人を超え、生産額も年間4億ドルに達するなど年々規模を拡大している。最近の様子はどうなのか。金田直己(金徳吉)金田事務所代表から開城工団訪問記を寄せてもらった。

◆「韓日企業、協力して進出を」 金田 直己(金田事務所代表)◆

 東京で開城工団企業協会の会長だったという金學権氏・仁川経営者総協会会長から開城工団の意義を聞かされ、それを契機に同工団を視察することになった。

 5月11日の当日、朝8時にDMZ・南北非武装地帯前の韓国側入国管理事務所に到着した。ソウル江南のホテルから1時間とかからなかった。きょうの開城工団視察は、10時に出発し午後4時に戻ってくる1日のコースだ。

 私は同行してくれた金会長の車でDMZを越えて北朝鮮側の入国管理事務所に向かったが、全ての車輌は南側で予め北朝鮮のナンバープレートに付け替えなければならなかった。

 この時間帯の出境者は30車両ぐらいで、工業団地には15分ほどで到着した。現代峨山の現地事務所で開城工団の概要について説明を受けた。開発予定地は6600万平方㍍と広大なものだが、まだ第一期工事の330万平方㍍の60%しか完成していない状態という。3カ所のゴルフ場、ホテル、住宅団地、金融センターなどが計画されているが、現在は工場以外の施設としては2カ所のホテルと現代娥山の事務所、北朝鮮が経営するレストランぐらい。

 現在、韓国企業は繊維、化学、金属化学、電子製品、食品、製剤などの業種の123社が進出しているが、圧倒的に多いのは繊維関連の72社。その多くが縫製工場で背広やゴルフシャツ、婦人服など作っているという。

 私は、金会長の経営する金型・電子部品工場のほか、化成品、縫製工場などを見学できた。働いている人の年代は様々だが、縫製は全員女性だった。作業雰囲気は淡々としていた。中国進出の経験がある企業の人に話を聞いてみると、こちらの方が問題はないという。むしろ生産性が高く、特に韓国への輸送コストがかからないのが大きいという。

 ここでは企業ごとに異なるが、朝7時から午後3時、午後10時から朝5時までを原則として2交代制も多く、約5万2000人の北朝鮮労働者が働いている。月給与は61㌦が基本だが、残業などもあり1人当たり平均120㌦ぐらいになる。基本的に安い労働力が魅力的だ。

 金日成総合大学の工学部出の管理チームがいて、彼らが韓国企業のメンバーと共同で管理している。韓国側は彼らを大変優秀で能力が高いと評価していた。共同で管理するのは良い制度だと思ったが、作業場の改善策も共同で決めているようだ。半世紀以上分断が続いている中で、南北の人が同じ職場で働いているのを実際に目にして大いに感銘を覚えた。これは、一時的な例えばスポーツの南北統一チームなどとは違ったものだ。

 いまは労働集約型の産業が多く、生産額もそんなに大規模ではないが、将来的にはいろいろ可能性があると感じた。日本の企業も興味を示し、数社が投資目的で開城工団を視察したと聞いた。日本企業が韓国企業と一緒になって生産することも今後の選択肢としてあり得るのではないか。

 課題としては、いくつかのことを考えさせられた。今回、携帯電話の持ち込みが禁止されて韓国側で預けたが、進出企業も携帯電話やインターネットを自由に使えないという。またビザに制限があり、人の往来も自由ではない。進出企業に対して、通信往来などもっと自由な経済活動を保証すべきだと思った。南北間の経済協力があれば、平和維持にもつながるというが、開城工団が発展すればいろんな面で意味があり、実利もある。北は経済政策のことを実利社会主義といい、工場や企業で実際的な利益をあがることが重要だと強調している。ならば、それに沿ってやっていけばいいと思う。私たちもあれこれ理屈をいうまえに、できることが目の前にあるのではないかというのが開城工団訪問の印象である。


◆開城工業団地◆

 2000年8月、現代グループと北朝鮮の間で北側が土地と労働力を、南側が技術と資本を提供して開城に工業団地を造る合意書締結。北で02年11月に開城工業地区法を制定。一般の行政地域から切り離す。03年6月に330万平方㍍を造成する第1期工事に着手。04年末から操業開始。最終的な開発予定地は6600万平方㍍。進出企業は年々増え現在123社が稼働。11年の生産額は4億㌦を突破し、07年の2倍以上に増える。今年3月末現在累計で13億4485万㌦に達した。開城工団で働く北朝鮮労働者は05年末の6013人から今年3月末現在5万1874人へと8倍以上増えている。