◆日韓の輸出品目差別化・大きな打撃受ける心配なし◆
2012年11月に当時の野田首相が衆議院解散を表明して以降、政権が交代し安倍総裁が首相となり強力な金融緩和を行うとの予測の下、円が対ドルで減価する動きが進んだ。一方でウォン・ドルレートには大きな変化がなかったため、結果的には、円が対ウォンでも減価することとなった。
韓国銀行のデータベースによれば、2012年10月の平均レートが100円=1401ウォン、2013年5月が1100ウォンである。よってIMF方式の為替変動率で見れば、この期間に26・2%のウォン高となったと言える。
日韓の輸出品目には競合しているものが少なくなく、円に対するウォン高は競争力の低下から輸出にマイナスの影響を与え得る。そこで2013年1~5月における通関基準の輸出額を見てみよう。
まず総額は前年同期比で0・9%の増加である。内訳を見ると、電気・電子製品は13・7%増、自動車及びその部品は2・3%増である一方で、鉄鋼製品は7・5%減、船舶は32・6%減である。また国別では、アメリカ向けが1・5%増、中国向けが10・7%増である半面、日本向けは10・4%減となっている。この数値のみを見れば、輸出の増加率は高いとは言えないがマイナスにはなっておらず、円安が大きく影響したとまでは言い切れない。
もちろんこの輸出変化率は為替にのみ影響を受けているわけではない。輸出に影響する経済変数としてもちろん為替レートがあるが、これとともに重要な変数が輸出相手国の景気である。標準的な経済の教科書によれば、為替レートが減価すれば輸出が増加し、外国の生産が増えればやはり輸出が増加する。
2012年にはアメリカの景気が今一つであったが、2013年には回復の兆しが見え始めている。よってアメリカの景気回復基調による輸出増効果が、円安による輸出減効果を相殺している可能性がある。つまり輸出総額やアメリカ向け輸出の増加はしているからといって、円安の影響がないとは言えない。
ただし韓国銀行や韓国開発研究院(KDI)の経済見通し担当者は、輸出は円安の影響をそれほど受けないと見ているようである。
韓国銀行は、輸出の見通しを出しているが、2012年の3・8%増から、2013年は6・4増、2014年には8・4%増と、今後輸出が順調に伸びていくことを予測している。またKDIも、2012年3・8%、2013年5・2%、2013年8・3%と韓国銀行と概ね同じ見通しを示している。
そして両機関とも、韓国経済は2014年には潜在成長率に回帰することができるとしており、円安が景気回復の動きに大きな影響を与えないと見ている。なお韓国銀行の見通しは4月に、KDIは5月に公表されているので、円安の影響は織り込まれていると考えられる。
ではどうして円安が進むなか、韓国の輸出や経済がそれほど大きな打撃を受けずにすむのか韓国銀行にインタビューした。以下ではこの回答を紹介しよう。
「円安の影響は過去と比較して弱まっている。その理由の一つは日韓の輸出品目が差別化されていることが挙げられる。例えば半導体については、主力はメモリーである。昔は日本もメモリーで韓国と熾烈な競争をしていたが現在は撤退しており、現在における日本の主力は、家電製品を制御するための非メモリー半導体等である。また韓国も海外生産比率を高めているため、円安がただちに価格競争力の喪失につながることも少なくなっている。無論、造船や自動車等、日韓がしのぎを削って競争している品目もあり、これらについては影響を避けることができないと考えられる。しかしながら、円安には韓国経済全体を苦境に陥らせるほどのインパクトはないと言えよう」