◆71年朴正熙大統領の第3期就任式で発行、国家と大統領の象徴として◆
朴槿惠新大統領の就任式が、いよいよ、2月25日に迫ってきた。というわけで、今回は韓国大統領のシンボルマークとしてテレビなどでもおなじみの大統領鳳凰標章について少し書いてみよう。
朝鮮王朝時代から、鳳凰は君主の象徴の一つとして用いられ、大韓民国の成立後も国家や大統領の象徴として使われてきたが、必ずしも決まった形式のものがあったわけではなかった。
現在の大統領標章が正式に制定されたのは1967年1月31日に「大統領標章に関する公告第7号」が発せられてからのことだが、その詳細な制定過程などについては資料が残っていないという。ちなみに、この標章を取り上げた最初の切手は、1971年7月1日、朴正熙大統領3期目の就任式の際に発行された記念切手である。
さて、大統領鳳凰標章は韓国の国花・ムクゲを中心に向かい合った鳳凰を描くデザイン。伝統的な文様では、雄の鳳と雌の凰に分けられ、両者の形は微妙に異なっているが、標章では2羽は全く同じ形になっている。
こうしたことから、たとえば、祥明大学のキム・ナムホ教授などは、「一対の鳳凰には陰陽の調和と共生の意味」があり、「朝鮮時代の王室では雄の鳳の尾に花などを飾り、雌である凰のものより華麗に表現し形を変えていた。大統領標章は2羽が雌雄の区別なく同じなため極端に解釈すれば鳳凰ではなく鳳鳳や凰凰になる」として、25日に発足する新政権に対しても標章のデザイン変更を求めていくという。
もっとも、キム教授らの首長に対しては、標章はあくまでも現代のモノであり、かならずしも、朝鮮王朝の伝統に厳密に従う必要はないとする声も少なくないようだ。
ちなみに、残りの任期がわずかとなった李明博現大統領は、2008年の大統領就任に先立ち、鳳凰標章を権威主義的として廃止を検討したが、廃止には法令の改正が必要だったこともあり、標章廃止の話はいつしかうやむやになってしまった。
さて、大統領標章は大統領の執務室や大統領専用車などに掲げられているのがテレビなどにも映っているが、実物を直接見ようと思えば、やはり、大統領官邸である青瓦台に行き、その門扉を拝んでくるのが手っ取り早いだろう。
韓国の大統領官邸、青瓦台の土地は、もともと景福宮の一角だった場所で、日本統治時代の1939年には朝鮮総督官邸が建てられた。1948年に大韓民国が成立すると、旧総督官邸は初代大統領の李承晩により大統領官邸に転用された。当初は景武台と呼ばれていたが、李承晩退陣後の1960年、尹潽善が建物の外観にちなんで青瓦台と改名した。
現在の官邸本館は、盧泰愚政権時代の1991年に韓国の伝統的な建築様式で建設されたもので、名前の由来である青い瓦は1枚ずつ手焼きで作られ、100年の耐久性があるという。
青瓦台は10日前までに事前予約を行えば見学できるのだが、景福宮の北門を出ると通りを挟んで反対側が青瓦台の正門ということもあって、そうとは知らずにやってきた観光客が写真を撮って喜んでいる光景にしばしば出くわす。
もっとも、そこは大統領官邸ゆえ、周辺の警備は厳しく、指定の場所以外でカメラを構えて警察官から注意されている人も少なくないが 。
なお、今回ご紹介の写真も、そうした観光客に混じって、通りを挟んだ反対側の指定場所からデジカメの望遠で撮ってみたものだ。