◆両国企業が協業して発展を◆
日韓両国に産業技術協力財団(日本側=佐々木幹夫理事長)が設立されて、事業をスタートして20年が過ぎた。両財団が実施した事業は日韓両国の企業のビジネス連携、技術交流の推進で、特に韓国の中堅・中小企業の発展、さらには日本企業との連携強化に寄与している。
1993年に日韓両国の産業技術協力財団は、韓国の対日貿易インバランスを是正することを目的に、韓国の中小企業育成事業をスタートした。事業の柱は、「産業技術人材育成の支援・協力」「生産性向上・品質向上などの支援・協力」「産業技術・産業人の交流促進」「セミナーの開催、調査研究と広報」の4つである。
事業内容は日韓両国の産業・経済情勢により適時、見直ししており、現在は将来性のある日韓連携第三国展開事業、医療介護技術事業を加え、新事業を推進している。
現在の事業構成は、①日韓ビジネス交流促進事業②産業・技術交流事業③調査・交流事業である。事業数は約20である。現在に至る事業の中で、韓国の中小企業の向上・発展に寄与した事業として産業・技術交流事業の一つ、「生産性向上協力事業」を取り上げ、事業を通じて韓国の中小企業の問題点、提案について述べるものがある。本事業は当財団が93年に設立されて以来、09年まで日韓両財団の共同事業として17年間実施した。
生産性向上、品質向上等、工場改革・改善を希望する韓国企業を募り、事前調査を経て、年間10社程度を選定し、日本の技術専門家を派遣し指導するものである。主な指導分野は、 電気・電子、機械加工、溶接、プレス金型、射出成形、金属加工、化学である。専門家は1社当たり、2~3名、延べ1~3週間滞在し、工場・現場の改善に尽力した。指導にあたっては、モノづくりの現場において、問題点の抽出、改善解決策、将来への提言を、職場風土の改善を醸成しながら進めた。図に示す如く、17年間に受診した企業は133社で、コンサルティングなど短期間の事業を含むと300社を超える。また事前調査で訪問した企業は400社にのぼる。派遣した技術専門家は延べ250名を超える。企業の指導要望について経営者・従業員と面談、工場調査と合わせて、分析して最優先課題を選定した。プロジェクトテーマとして、チーム作りは小集団活動をベースに多くの部署からメンバーを募り、7~10名の構成で進めた。チームリーダが活動を指揮して、専門家のサポートを得ながら、問題点のデータ収集・分析、改善・対策、効果検証を実施した。受診した企業の業種は、機械加工、電気・電子、自動車部品が全体の87%を占める。企業の所在地は韓国全土に分布するが、京畿道、仁川、釜山、慶南が全体の65%を占める。韓国の中小企業において国際競争力、市場開拓力など成長が著しい分野、地域の現状と一致する。企業における指導テーマ(プロジェクトテーマ)はモノづくりの設計から製造に関わる内容で多岐にわたるが、品質向上、工程改善、3定5Sが全体の54%を占める。
現在、事業は韓国の韓日産業・技術協力財団が継承、実施しているが指導内容はほとんど変わらない。