ここから本文です

2014/01/17

<トピックス>私の日韓経済比較論 第36回 女性活躍促進策                                                      大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。2013年より教授。

  • 私の日韓経済比較論 第36回 女性活躍促進策

    韓国の女性国会議員ら

◆国会議員、管理職に女性クオータ制導入◆

 日本では国会議員や管理職などに女性が少ないが、韓国でも事情は同じである。日本では日本経済の再生に向けた三本の矢の一つである「新たな成長戦略」において、「女性の力を最大限活かす」を盛り込んだ。

 具体的には、「女性の活躍を促進する企業の取り組みを後押しし、企業の職場環境を整備するため、管理職・役員への登用拡大に向けた働きかけや情報開示の促進などを行う」といった方策を講ずるとしている。

 韓国では女性の活躍を促進するため幾つかの方策を導入している。その最もドラスティックなものが国会議員であろう。公職選挙法では、政党が比例代表国会議員選挙に候補者を推薦する時には、その候補者の50%以上を女性とすることが義務づけられている。そして、比例代表候補者の下位に女性候補者が集中しないように、候補者名簿の順位の奇数に女性を推薦しなければならないとしている。

 さらに、女性候補者の比率と順位について違反が見つかった場合は、候補者登録が無効になることも定められている。なお小選挙区については、公認候補者に占める女性比率が基準を超えた政党に対して補助金を支払う制度が導入されている。

 第19代国会議員選挙を見てみよう。比例代表はクオータ制の効果が絶大であり当選者の52%が女性である。一方で、小選挙区は8%にとどまっている。

 韓国では国会議員の定数300のうち、246が小選挙区に割り当てられているため、国会議員全体の女性比率は16%である(京郷新聞電子版2012年4月12日)。

 しかし、比例代表におけるクオータ制がなければ、国会議員の女性比率はこれより低くなることは間違いなく、このドラスティックな制度は国会議員の女性比率の高まりに貢献しているといえる。

 さらに国会議員のクオータ制のような華やかな制度ではなく、日本における知名度もないが、民間企業の管理職への女性登用についても方策を講じている。韓国では、500人以上の企業と公企業は、管理職の女性比率などの指標を、毎年、雇用労働部に報告する義務を負っている。

 そして雇用労働部は、企業からの報告を集計した上で、女性比率が平均値の60%未満である企業に対して、積極的改善措置施行計画書の提出を求めている。例えば、女性管理職比率の平均が20%であれば、12%未満が計画書提出の基準となる。

 とはいっても、保健および福祉サービス業のように女性管理職比率が高い業種もあれば、建設業のように低い業種もある。そこで業種および規模(500人から999人の企業と1000人以上の企業)別に基準を出している。

 積極的改善措置施行計画書には、目標設定をした上で、目標達成のための制度や慣行の改善計画を盛り込む。そして計画のフォローアップのため、積極的改善措置履行実績報告書を毎年提出する。

 なお、提出義務を負っている企業が、管理職の女性比率などの指標を提出しない場合、基準値を下回ったにもかかわらず積極的改善措置施行計画書、積極的改善措置履行実績報告書を提出しない場合は、過怠金を科せられる。

 ただし、計画の履行はあくまでも自主的に行うこととされており、計画が履行されなくても罰則はない。

 この制度の根拠は「男女雇用平等と仕事・家庭両立支援に関する法律」であり、2006年の改正法施行により制度が始まった。

 制度の効果がどの程度寄与しているかは明らかではないが、女性管理職比率は、06年の10・2%から11年には16・1%と、毎年1%程度のペースで高まっている。

 韓国といえば、女性の活躍が遅れているイメージがあるが、ドラスティックで華やかな方策、地味ではあるが着実な方策により、女性活躍を促進していることは注目すべきであろう。