◆日韓ともさらなる引き上げ必要◆
日本では4月1日に消費税率が5%から8%に引き上げられた。日本では1989年に消費税が導入され、当初3%であったが、1997年に5%に引き上げられ、今度で2回目の引き上げとなる。
引き上げの理由は、今後高齢化が急速に進むなか、社会保障費の安定財源を確保することであるが、IMF(国際通貨基金)の報告書は、さらに進む高齢化の下で安定的な財源を確保するため、少なくとも消費税率を15%に引き上げる必要性を指摘している。
日本の消費税は来年10月に10%に引き上げられる予定であるが、これでは足りず、今後さらなる消費増税がなされる可能性がある。
急速に高齢化が進むといった点は日本も韓国も同様であり、むしろ韓国の方が高齢化のスピードは速い。
2013年の高齢化率は韓国が12・2%、日本が25・1%と、日本の高齢化率がはるかに高いが、2060年には韓国が40・1%、日本が39・9%と逆転してしまう。
よって高齢化率の見通しだけ見ると、将来的には韓国でも消費税の引き上げ(正確には付加価値税)が避けられないようにも思える。
韓国の消費税の歴史を見てみよう。韓国の消費税は、1977年7月に施行された付加価値税法を根拠として導入された。
法律では、付加価値税の税率は13%とされていたが、大統領令(日本の政令)により上下3%の範囲内で調整することができるといった弾力条項があった。そしてこの弾力条項により、消費税の導入時から税率は10%とされた。なお1989年1月には改正法が施行され、本来の税率が10%に引き下げられ、現在に至っている。つまり韓国では導入時より10%の税率が維持されている。
高齢化が急速に進む韓国では、日本のように消費税を引き上げなければならないのだろうか。その答えは「Yes」であるが、それほど大きく引き上げる必要はなさそうである。
韓国の社会保障は「低福祉・低負担」である。国民年金の所得代替率は、導入当初こそ70%といった高い水準であったが、現在は段階的に引き下げている途中であり、最終的には40%となる。
韓国の国民年金には国費が投入されておらず、基礎年金の半分を国費でまかなっている日本と大きく異なっている。よって国民年金の成熟とともに所得代替率を大きく引き下げることが必要となったのであるが、これ故に、高齢化が進んでも年金給付増が国家財政に負担をかけることはない。
他方、韓国の医療保険制度である国民健康保険には国費が投入されている。しかし、日本のように高齢者に対する負担の軽減措置を行っていないことから、医療保険支出に対する国費の投入率は低い。
韓国国会の傘下機関である国会予算政策処の見通しによれば、社会福祉制度や税制を変更しなければ、2012年で35%である国家債務の対GDP(国内総生産)比が、2043年には100%を超え、2060年には219%にまで高まる。これは途中で国民年金の積立金が底を尽き、それ以降は国費で赤字分をまかなうことが仮定されているからである。
しかし現在は9%である年金保険料率を2025年までに12・9%に引き上げ、支給年齢を2025年までに67歳とするといった年金改革を行った上で、消費税率を2018年以降に12%に引き上げれば、2060年の国家債務の対GDP比は64・7%にとどまる。
つまり「低福祉」の韓国でも、高齢化率40%といった世界でも例を見ない超高齢社会の下では、健全財政を維持するために消費税を13%にまで高めなければならない。
日本は、「中福祉・低負担」を目指した結果、大きな財政赤字を抱えることとなり、仮に来年10月に消費税率が10%にまで引き上げられたとしても、危機的な財政状況が改善する見通しが立たない状況である。日本の世論は、消費税の引き上げに極めて強い拒否反応を示す。しかし、「低福祉」の韓国でさえ、超高齢社会を乗り切るためには、消費税を13%にまで引き上げる必要があることを認識した上で、将来的には相当程度、消費税率が引き上げられることを覚悟した方がよさそうである。