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2014/05/16

<トピックス>私の日韓経済比較論 第40回 女性活躍推進策                                                    大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。2013年より教授。

◆韓国の国会議員女性が15・7%、日本もクオータ制導入を◆

 安倍内閣は、経済再生のための「3本の矢」の一つとして「成長戦略」を掲げているが、その一つの柱が「女性の活躍推進」である。

 その一環として、指導的地位における女性比率を高めるための取り組みがなされており、上場企業に対し、役員への女性登用を要請するとともに、国家公務員の幹部の女性比率を高めるための計画を示している。

 しかし国会議員については取り組みがなされているようには見えず、様々な利害関係から手を付けられないのではないかと推察される。

 さて韓国では民間部門、行政部門に対する幹部への女性登用策を行っているが、国会議員についてはより強力な策が講じられている。以下ではこれを紹介しよう。

 韓国では国会議員における女性比率が低い状況が続いていた。1948年総選挙では女性の当選者が1名、女性比率は0・51%であり、その後少しずつ高まったものの、96年総選挙でも9名、3%にとどまっていた。

 そのようななか、2000年の政党法改正で、クオータ制が導入された。このクオータ制により、政党は比例代表全国選挙候補者の30%以上を女性とする義務を負った。

しかし導入当初のクオータ制には、①政党の義務履行を担保する条文がなかった、②比例代表候補者名簿の順位にかかる規定はなかったので、政党が名簿の下位に女性を集中させる可能性があったことが問題であった。そして実際に、クオータ制が適用された後の00年総選挙では、女性の当選は16名、女性比率は5・9%と、期待された効果が見られなかった。

 しかしこの後、クオータ制は選挙ごとに強化されていく。04年の政党法改正で、政党は比例代表候補者の女性比率を50%にする義務を負った。さらに05年には、政党に比例代表候補者の順位の奇数を女性とする義務が課せられたとともに、義務を履行しなかった場合、候補者登録を無効とする規定が置かれた。

 これによって、04年の国会議員に占める女性比率は13・0%、08年は13・7%、12年は15・7%と高まることとなった。

 これほど強力なクオータ制であるので、もう少し国会議員の女性比率が高まっても不思議はないと思われるが、10%台にとどまっている理由は比例代表に割り当てられる議席数が少ないことである。300議席のうち、比例代表の議席は54、比率にして18%に過ぎない。

 比例代表で当選した議員の女性比率は52%であるが、地方区では8%にとどまっている。よって全体の女性比率が低くなる。

 では地方区にはクオータ制はないのであろうか。04年の改正政党法では、地方区について、公認者の女性比率を30%とすることを努力義務とした。また女性比率が一定比率を超えた政党に対して、女性推薦補助金が支払われる。

 しかし、公認者の女性比率については努力義務に過ぎず、補助金もそれほど魅力がないのであろうか、女性に対する公認は積極的ではない。12年総選挙でも246選挙区に立候補した女性数は全政党で63名に過ぎない。そして内訳を見ると、与党であるセヌリ党が16名、野党第一党である民主統合党が21名、統合進歩党が7名、その他が19名である。

 それでも韓国の国会議員選挙において、比例代表にクオータ制がある効果は大きい。日本における衆議院議員の女性比率は8%である。列国議会同盟(IPU)によると、日本の女性議員比率は、150カ国中128位であり、アジアで日本より下位にある国は、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマーに過ぎない。

 「成長戦略」に位置づけられた「女性の活躍推進」については、やりやすいところから手を付けている印象がある。やりやすいところに手を付けて実績を残したい気持ちは理解できるが、難しいところに手を付けてこそ、日本の成長が促されるのではないか。