◆開業10年、全国を一日生活圏化◆
本紙4日号の記事にもあったが、2004年4月1日にKTX(韓国高速鉄道)が開業してから、ちょうど10年が経った。
朴正熙政権時代の1970年6月に京釜高速道路が開通して以来、韓国政府は“全国の1日生活圏化(全国を1日で往復できるようにする)”を進めてきた。当初、1日生活圏化は高速道路の建設を中心に進められていたが、2度の石油危機や自動車の急増による渋滞の悪化などもあり、全斗煥政権下の1983年頃から、京釜高速鉄道建設にむけた調査が開始される。
この時点では、韓国の土木建設は1988年の五輪関連のものが優先されていたが、五輪後の1989年、韓国政府は京釜高速鉄道建設方針を正式に決定する。具体的な建設作業を進めるための韓国高速鉄道建設公団が発足したのは1992年3月のことで、同年6月に着工した。
翌1993年にはフランスTGVを基本とした車両KTX―Iが決定する。KTX―Iは、TGV車両の韓国仕様だが、先頭部のデザインがフランスのものよりもやや丸みを帯びているほか、車両構造が強化されているなどの差異がある。
車両には、フランス・アルストム社の製品をそのまま輸入したものと、同社から主要部品を輸入して、韓国メーカーのロテム(現・現代ロテム)が組み立てるノックダウン方式で車両がつくられたものの2種類あり、2002年7月、忠清南道の天安=鳥致院間での試験運行で時速309㌔を記録した。
在来線直通運転区間での試運転が開始されたのは、翌2003年5月のことで、2004年4月1日、京釜高速線(ソウル=釜山間)、湖南高速線(龍山=木浦間)、京義線(ソウル=幸信間:車両基地への引込線として使われている路線)が開業した。ちなみに、東大邱=釜山間の開業により、ソウル=釜山間の京釜線が全線開通したのは、2010年11月1日のことである。
開業当時のKTXは、全区間において専用路線は一部に限られており、大部分は在来線と線路を共有していたが、それでも、この開業によりソウル=釜山間の移動時間はそれまでの4時間20分から2時間40分にまで短縮されるなど、大きな成果を上げている。
KTXの営業開始に合わせてソウル駅では大規模な改修工事が行われ、開業前年の2003年、現在のガラス張りの新駅舎が竣工した。なお、以前はソウル発の長距離列車はソウル駅を始発としていたが、KTXの開通により、湖南線(京釜線の大田から分岐して木浦まで)・全羅線(益山で湖南線から分岐して麗水まで)・長項線(京釜線の天安から分岐して益山まで)への直通列車は龍山駅始発に変更された。
KTXの開業に合わせて、2004年4月1日に発行された記念切手は、ソウル駅を出発するKTX―Iの車両を描くもので、パクウンギョンが原画繪尾制作した。
なお、開業直前の3月12日、大統領選挙における不正資金疑惑により、国会で大統領への弾劾訴追が可決されたことを受けて、盧武鉉は5月14日まで大統領職務を停止され、この間、国務総理(首相)だった高健が大統領代行になった。高はソウル駅で行われた開業式典にも主賓として招かれ、盧に代わってテープカットなどのセレモニーを行った。