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2015/08/21

<トピックス>私の日韓経済比較論 第55回 朴大統領の経済談話                                                    大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。

◆経済構造の大手術提唱も、効果は未知数◆

 8月6日、朴槿惠大統領は「経済再飛躍のため国民の皆様に申し上げる言葉」と題する談話を発表した。潜在成長率が低下するなか、経済構造の大手術により慢性的かつ構造的な問題を根本的に解決するため、労働改革、公共部門改革、教育改革を提唱した。

 談話では、潜在成長率が低下している理由として、生産可能人口の減少、放漫な公共部門、硬直化した労働市場、非効率的な教育システムなどを挙げており、これらを解決するため3つの改革を行うとした。

 私の認識では潜在成長率が下落傾向にある要因は、少子高齢化である。談話でも触れられているように生産可能人口が減少に転ずるのは時間の問題であり、労働投入の伸び率は年々低下している。さらに高齢化はマクロで見た貯蓄率低下を招き、投資率低下を通じて資本投入の伸び率を低下させる。80年代までは10%に近かった潜在成長率が、現在は3・5%程度となり、20年後には1%台にまで低下する主要因は少子高齢化である。

 少子高齢化の流れを変えることは容易なことではなく、経済再飛躍の定義にもよるが、再び5%を超えるような飛躍は不可能である。生産性の伸びを高める政策を講ずることで、潜在成長率の低下を少しでも和らげて、0・1%でも成長率を上乗せすることが現実的と言えよう。

 経済の再飛躍は無理でも、生産性の引き上げにより、成長率低下のスピードを遅らせることは可能であり、3つの改革を成し遂げ、労働、公共部門、教育が抱える問題が解決されれば、それぞれ生産性を引き上げる可能性はある。しかし談話で示された改革の処方箋では問題の解決に至らないのではないかと懸念している。

 まず労働改革である。能力と成果により採用と賃金が決定される公正で柔軟な労働市場が実現できれば、適材が適所に配置され生産性は高まるであろう。また若年層の働き口の多くが非正規職であれば、人的資本蓄積の面で大きく将来的な生産性を引き下げる要因となる。よって能力のある若年層に正規職としての働き口が提供されれば、今後の成長率にプラスの効果を与えるであろう。


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