◆低賃金・雇用調整容易で雇用不安に◆
前回のコラムでは、韓国における非正規労働者数などについて紹介した。非正規労働者は、雇用形態や職種等によって労働条件や雇用安定度が異なっている。そこで数回に分けて、韓国における非正規労働者の様々な雇用形態と労働問題について触れていく。今回は、韓国で一般的な非正規雇用形態である契約社員について紹介する。
契約社員は、韓国の公式統計では期間制労働者として分類される。統計庁の「経済活動人口調査(勤労形態別付加調査)」(15年3月)によると、期間制労働者数は262万5000人で非正規労働者全体(601万2000人)の43・7%を占める。性別で見ると、男性より女性が多い(男性125万7000人、女性136万9000人)。ただし、女性非正規職の雇用形態は時間制労働者(147万1000人)が最も多いのに対し、男性非正規職の雇用形態は期間制労働者が最も多い(男性の時間制労働者数62万人)ことが特徴である。
契約社員は韓国では従来から一般的な非正規雇用方式であるが、97年末に発生した通貨危機を契機に、正規職の雇用調整等によって発生した人手不足を契約社員で補充する傾向が強まった。そのため、労働条件が比較的良好な契約社員の場合、通貨危機以前は正規職の業務であったものも少なくない。
期間制労働者の労働条件は、正規労働者より劣悪であるが、非正規職全体の中では相対的に良好である。統計庁の同調査によると、期間制労働者の月平均賃金は160万ウォンで正規職(271万3000ウォン)の6割弱にすぎないが、他の非正規職(時間制労働者73万1000ウォン、非典型労働者150万7000ウォン)に比べて高い水準である。また、福利厚生面も期間制労働者は非正規職の中では適用率が高い。期間制労働者に対する賞与・退職金・有給休暇の適用率(賞与56・9%、退職金66・4%、有給休暇53・6%)は、非正規職全体(賞与40・7%、退職金41・6%、有給休暇32・6%)より高い。職場加入方式による社会保険適用率も、期間制労働者(国民年金59・8%、健康保険72・0%、雇用保険67・8%)は、非正規職全体の水準(国民年金37・9%、健康保険45・2%、雇用保険44・0%)を上回っている。
企業が契約社員を採用する主たる目的は、正社員より低賃金で雇用調整も容易な契約社員を活用することによって人件費を削減することである。したがって、契約社員は、雇用契約期間が満了する度に「果たして再契約してくれるのか」、「もしかしたらリストラされるのではないか」という雇用不安を抱くことになる。実際、統計庁の同調査によると、期間制労働者の平均就労期間は29カ月と正規職(87カ月)の3分の1にすぎず、非正規職全体(29カ月)と同じ水準である。
韓国では、07年に施行された非正規職保護法で有期契約労働者の雇用期間の上限を2年(常用雇用4名以下の事業所で就労する者、55歳以上の者などは適用除外)とし、適用対象者は雇用期間が2年を経過すれば無期契約を締結したものとみなされる制度が導入された。この「2年ルール」の適用対象となる有期契約労働者に対する企業の対応は、原則的には①無期雇用転換、②雇い止めに分かれることになる。
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