◆急がれる「劣悪な待遇」への対処◆
パートタイムというと、日本では一般的に主婦が働いている雇用形態を連想するであろうが、韓国はパートタイムの仕事が少ないと言われている。実際、韓国は日本よりパートタイム労働者が占める割合がとても低い。
OECD(経済協力開発機構)の『雇用アウトルック(15年版)』によると、パートタイム労働者が労働者全体に占める割合(14年)は、日本が22・7%(男性12・0%、女性37・2%)に対し、韓国は10・5%(男性6・8%、女性15・6%)にすぎず、特に女性の場合、割合の差が顕著に表れている。
統計庁「経済活動人口調査:勤労形態別付加調査」(15年3月)によると、時間制労働者数は209万1000人と期間制労働者数(262万5000人)や非典型労働者数(214万8000人)を下回っている。時間制労働者の性別構成は男性62万人、女性147万1000人であり、女性が約7割を占めている。
韓国の場合、パートタイムのみならず、女性の雇用率が低い国である。OECDの前掲統計によると、14年の韓国の雇用率(15~64歳)は65・3%であり、性別で見ると、男性が75・7%であるのに対し、女性が54・9%にとどまっている。韓国の女性雇用率は、他の先進国(日本63・6%、米国63・0%、英国67・8%、ドイツ69・5%)と比べても低い数値である。
このように韓国の女性雇用率が低い原因としては、結婚・出産等を契機に女性が退職し、家庭と仕事の両立ができる職を見つけられないまま非労働力化してしまうケースが多いことが挙げられる。このような背景から、政府は時間制雇用の創出による雇用率の向上を目指す政策を展開しようとしている。
朴槿惠政権は、雇用率70%への向上をスローガンに掲げており、時間制雇用の創出を重要な課題の一つとして掲げている。
13年に政府が発表した「雇用率70%ロードマップ」では、個人の自発的需要、差別なき雇用、基本的労働条件を備えた「良質の時間制雇用」の創出・拡散を政策課題の一つに掲げている。政府の意図は、結婚・出産を機に就労経歴が断絶しがちな女性を中心に良質な時間制雇用を提供して、雇用率を挙げることにあるといえよう。
時間制労働者数はこの10年間、増加傾向にある。
統計庁の前掲統計によると、15年3月の時間制労働者数(209万1000人)は約10年前である2005年8月時点(104万4000人)に比べると倍増している。
同期間において男女ともに倍増しており、年齢別では20代の若者や50・60代の高齢者層の増加が目立つ。この世代は就職・転職難を抱えている世代でもあり、生計維持を目的とするパートタイム・アルバイト労働者が増加していることが示唆される。
問題は、時間制労働者の大半が「良質」とはかけ離れた待遇で働いている点である。統計庁の前掲統計によると、15年3月の時間制労働者の労働条件は以下のとおりである。
第一に、週あたり労働時間が短い(時間制労働者22・1時間、非正規職全体37・4時間)こともあり、月あたり賃金は73万1000ウォンと非正規職全体(146万7000ウォン)の半分程度にすぎない。
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