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2015/11/06

<トピックス>韓国労働社会の二極化 第5回 韓国の非正規労働④「派遣・請負」                                                    駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

  • 駿河台大学 法学部 朴 昌明 教授

    パク・チャンミョン 1972年兵庫県姫路市生まれ。関西学院大学商学部卒。関西学院大学大学院商学研究科博士課程前期課程修了。延世大学大学院経済学科博士課程修了。現在、駿河台大学法学部教授。専攻分野は社会政策・労働経済論・労務管理論。主な著作に「韓国の企業社会と労使関係」など。

  • 韓国労働社会の二極化 第5回 韓国の非正規労働④「派遣・請負」

    現代自動車・非正規労働者による待遇改善を求めるデモ

◆「構内請負労働者」の正規職転換が争点に◆

 日本では、派遣労働は社会的に関心が高い非正規雇用問題の一つである。日本のドラマで「ハケンの品格」が高い視聴率を記録したのも、派遣に対する注目の高さが表れていると言えよう。

 一方、韓国でも「ハケンの品格」のリメーク版として「職場の神」が放映され、話題となった。韓国でもこのドラマが注目を浴びたことは、韓国社会における女性労働や非正規雇用を巡る問題の根深さにも関連があるかもしれない。

 ところが、派遣に対する社会的注目度の高さに相反し、韓国における派遣労働者数は他の雇用形態の非正規労働者数に比べると少ない。

 統計庁の「経済活動人口調査付加調査」(2015年3月時点)によると、派遣労働者数は19万1000人で賃金労働者全体の1・0%(非正規労働者全体の約3%)にすぎない。

 韓国で派遣労働者数が少ない一因としては、労働者派遣法における規制の強さが挙げられる。労働者派遣法では、派遣が可能な業種が32業種に制限されている。製造業の場合、日本では派遣が容認されているが、韓国では禁止されている。

 他方、韓国の間接雇用は請負労働が多い。これは、派遣に対する法的規制が厳しい半面、業務請負の活用が容易であることが原因である。

 統計庁の上掲調査によると、2015年3月時点で請負労働者数は65万7000人で非正規労働者全体の1割程度(賃金労働者全体の3・5%)を占めている。また、雇用労働部の「雇用形態公示」(15年3月)にて公表された従業員300人以上の事業体における所属外労働者数を集計したところ、91万8000人に及ぶ。

 統計庁の調査で派遣労働者数が少ない点を考慮すると、大企業における間接雇用労働者の多くは業務請負によるものと予想される。

 アウトソーシング業者は派遣業務と請負業務の両方を取り扱っているケースが多く、企業の一般正社員も外部から調達された労働力が派遣なのか請負なのか区別できないこともある。

 法律上の派遣労働者が少なくても、間接雇用労働者は大企業などに多く存在するために、派遣に対する社会的注目度が高いのである。

 統計庁の前掲調査によると、派遣・請負など非典型労働者の15年3月時点の労働条件は以下のとおりである。

 まず非典型労働者の月平均賃金は150万7000ウォンであり、直接雇用である期間制労働者(160万ウォン)より10万ウォン程度低い水準である。

 半面、週当たり労働時間は非典型労働者(40・8時間)のほうが期間制労働者(39・8時間)よりも1時間少ない。したがって、同じフルタイムの非正規雇用でも、間接雇用は直接雇用よりも待遇が若干悪いことがわかる。

 非典型労働者と期間制労働者間の格差が大きいのは、社会保険加入率と賞与・退職金等の適用率である。

 まず、職場加入方式による社会保険加入率は、期間制労働者が6~7割程度(国民年金59・8%、健康保険72・0%、雇用保険67・8%)であるのに対し、非典型労働者は2~3割程度(国民年金21・3%、健康保険31・8%、雇用保険29・2%)の水準にとどまっている。

 次に、賞与・退職金等の適用率についても、非典型労働者(退職給与30・8%、賞与金29・2%、有給休暇21・2%)は、期間制労働者(退職給与66・4%、賞与金56・9%、有給休暇53・6%)の水準を大幅に下回る。


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