◆「労働者」か「個人事業者」か区分難、低い社会保険の適用率◆
日本の建設業等には、「一人親方」という労務関連用語がある。
一人親方は労働者を雇わない個人事業者を意味するが、労働法で労働者と認められないために、様々な労働問題を生み出した。保険外交員や宅配配達員なども法律上の「労働者性」の認定をめぐり争点となってきた職業である。
韓国には一人親方と類似した概念で「特殊雇用」とよばれる労務関連用語が存在する。
特殊雇用に該当する職種は、生コン車両運転手、家庭教師、ゴルフ場のキャディー、宅配配達員、保険外交員、訪問販売員、放送作家、デザイナーなど、幅広く存在する。
特殊雇用とは、法律上、「労働者」なのか「個人事業者」なのか区分が難しい点が特徴的である。
特殊雇用労働者は、契約上は個人事業者であっても、発注者から業務上の指揮・命令を受けている点で労働者の性格を有している。しかし、特殊雇用労働者は勤労基準法(日本の労働基準法に相当)などの適用を受けることができない。
統計庁では、「特殊形態勤労従事者」という用語を用いて特殊雇用労働者数を集計している。
統計庁の「経済活動人口調査(勤労形態別付加調査)」によると、2015年8月時点の特殊形態勤労従事者数は、49万4000人で賃金労働者全体(1931万2000人)の2・6%にすぎない。
しかし、統計庁の集計方式は特殊雇用労働者の規模を過小評価しているという指摘が労働運動側から行われている。
民主労総の場合、「250万特殊雇用労働者に労災保険を全面適用せよ」という声明文を15年11月3日に発表している。このように、政府と労働運動側が発表する特殊雇用労働者数には極端な開きがある。
韓国労働社会研究所の金裕善選任研究委員が「非正規職の規模と実態:経済活動人口調査付加調査(15年3月)結果」で発表した数値を引用しながら、15年3月時点の特殊雇用労働者の労働条件について説明する。
特殊雇用労働者の週労働時間は平均40・0時間で非正規職全体(40・1時間)とほぼ同じ水準である。過去のコラムで韓国の非正規職はパートタイムが占める比率が低いことを紹介したが、特殊雇用労働者の場合もフルタイム水準の労働時間である。
また、特殊雇用労働者の時間当たり賃金は平均1万1585ウォンであり、非正規職のなかでは賃金水準が高いが、正規職の賃金(1万6327ウォン)の71%にすぎない。
特殊雇用労働者の職業が多様であり、仕事の実績に基づいて報酬額が決まるので、賃金水準も職業によって幅広く分散していることが予想される。
特殊雇用労働者が劣悪な状況におかれているのは社会保険である。
上掲資料によると、特殊雇用労働者の事業場加入方式による社会保険適用率は、国民年金が1・8%、健康保険が3・0%、雇用保険が4・1%と極めて低い水準に止まっている。
このように社会保険適用率が顕著に低い原因は、特殊雇用労働者が契約上個人事業者とされるために発注先を通じた社会保険の適用が行われないことである。
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