◆雇用をめぐる世代対立が顕在化◆
今月のコラムから近年の韓国で非正規雇用と並ぶ深刻な労働問題である若者雇用について紹介していく。韓国では地域、政治的イデオロギーなど様々な要素による社会的対立が見られるが、今世紀に入り高まっているのが世代間対立である。日本と同様に韓国でも世代ごとにネーミングが行われ、流行語になるだけでなく、一般用語として定着する傾向がある。
「4・19世代」、「維新世代」、「386世代」は、4月革命、軍事独裁、民主化運動など各世代が若者であった頃の政治的背景をもとに名付けられた。また、「X世代」は、高度成長のもとで貧困を経験せず、若者になった時には民主化が実現されていた、既存の世代とは異なる「新世代」として命名された。
しかし、韓国で通貨危機が発生し、深刻な就職難に直面したのは、他の世代より裕福に育ってきた「X世代」からであった。当時の多くの若者が通貨危機の発生によって深刻な就職難に直面し、一流大学の学生ですら就職できないような事態が発生した。統計庁の「経済活動人口調査」によると、15~29歳の失業率は、1997年が5・7%であったのに対し、1998年には12・2%と急速に悪化した。
通貨危機以降、韓国は奇跡的なV字回復を実現させたが、若者の失業問題についてはむしろ慢性化する状態に陥った。
統計庁の上掲調査によると、15~29歳の失業率は、2000年が8・1%であるが、その後大幅な改善は見られず、2015年には9・2%と若干上昇している。特に、今年に入ってから失業率が急速に悪化しており、2月には12・5%にまで上昇している(表を参照)。
韓国の多くの大学生は、入学後も公務員や大企業など労働条件が良い職場を目指して必死に勉強する。大学で良い成績を残すために、単位は取得したものの不本意な成績が出た科目を再受講する学生も少なくない。
就職活動で英語が重視されるので、TOEICの点数を上げるために語学学校に通ったり、海外へ語学研修に行くために大学を休学したりする学生も多い。しかし、通貨危機以降続く就職難により若者の努力が報われず、若者の就職浪人、非正規雇用、ニートなどの問題が深刻化している。
そのような背景から、今世紀に入ってから若者世代の名称は、雇用問題を背景に名付けられるようになった。2000年代中盤から登場した「88万ウォン世代」は、若者の低賃金・不安定雇用を象徴する用語である。
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