◆雇用政策目標「就業率」70%、厳しい中・高卒の就職環境◆
前回のコラムでは、韓国の若年失業率について紹介したが、韓国社会における若者の失業規模について失業率だけで把握することは困難である。これは失業者の定義に起因する。
統計庁は、「経済活動人口のうち調査対象週間に収入を伴う仕事を行わず、過去4週間積極的に求職活動を行った者で、仕事が与えられれば即時に就業が可能な者」を失業者としている。そのため、主婦・受験浪人・求職断念者などは失業者ではなく、「非経済活動人口」に分類されるのである。
近年韓国では雇用状況を分析するにあたって失業率だけでなく就業率(韓国語:雇用率)という指標が重視されている。
就業率は、15歳以上人口のうち就業者が占める割合を意味し、朴槿惠政権は「就業率70%」を雇用政策目標に掲げている。そこで今回のコラムでは経済活動人口に占める就業者の割合である「就業率」という指標を用いて、先進諸国と比較しながら韓国若年層の実質的な失業規模について検討する。
本稿の二つの図表は、OECDの統計資料による韓国・日本・米国の男女別若年雇用就業率(15~29歳、2014年)についてまとめたものである。年齢階層ごとに若年就業率を見ると、以下のような特徴が見られる。
第一に、韓日米ともに15~19歳は他の20代前半・後半に比べて就業率が顕著に低い。特に韓国は15~19歳の就業率が男女ともに1割を切っており、日米よりも大幅に低い状態である。学生が多い10代後半の就業率が低くなることは先進国に一般的に見られる現象である。
韓国でも進学率が高いことが10代後半の就業率が低くなる原因となっているが、中・高卒の就職環境の厳しさも就業率を低迷させる一因となっている。
韓国は、OECD統計によると2014年韓国の15~19歳の失業率が男性10・2%、女性8・4%であり(2016年5月13日付コラムを参照)、10代後半の相対的に学歴が低い若者たちの就業が極めて厳しい状態にあることがわかる。
第二に、韓日米ともに20~24歳の就業率は10代後半の就業率よりも大幅に上昇する。ただし、日米の20~24歳の就業率は6割台まで上昇しているのに対し、韓国の20~24歳の就業率は男性39・3%、女性49・5%となっており、日米を大幅に下回っている。
高学歴志向の強い韓国では大学生が占める割合が高く、さらに男性には兵役の義務があるため、男子学生が20代前半で大学を卒業して就職することは困難である。
韓国の20代前半の就業率が4割を切り、女性よりも就業率が10㌽も低いのはそのような事情も作用しているからであろう。
一方、男女ともに5割を切る低い就業率は、20代前半の若者の就職難を物語っている。実際、OECD統計によると、14年韓国の20~24歳の失業率は、男性11・4%、女性9・3%と10代後半よりも高い状態である(16年5月13日付コラムを参照)。
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