◆雇用支援促進、職業訓練など幅広い対策を◆
近年の韓国では日本と同じく若年無業者の増加が社会問題になっている。この問題について韓国や日本では「ニート」という用語が幅広く用いられているが、そもそもニート(Not in Education, Employment or Training=NEET)とはイギリスで生まれた言葉であり、就労しておらず、教育・職業訓練を受けていないことを意味する。今回のコラムでは韓国における若年無業者(ニート)の現状について紹介する。(以下では、ニートは就学・就業・職業訓練のいずれも行っていない若年無業者を意味する)。
韓国労働研究院の13年の報告書(ナム・ジェリャン、キム・セウム『我が国青年ニートの特徴及び労働市場成果研究』)によると、15~34歳の非求職ニート数は1993年が26万7000人であったのに対し、通貨危機以降一貫して増加し続けた結果、2011年には100万8000人に達した。これに伴い、若者の雇用をめぐる問題は失業・非正規雇用のみならず「働く意欲のない若者」にまで社会的な注目を受けるようになった。
表は、韓国(2013年)の15~29歳人口に占めるニートの割合を学歴別・性別にまとめたものである。第一に、学歴が高くなるほどニートの割合が高くなり、高卒・大卒のニートの割合は20%台に達している。
性別に見ると、男性は高卒(22・0%)と大卒(21・6%)がほぼ同じ水準であるのに対し、女性は大卒(26・8%)が高卒(20・9%)を約5㌽上回っている。
第二に、求職活動を行っている「失業ニート」とそうでない「非経済活動ニート」に分類すると、どの学歴においても非経済活動ニートが失業ニートを大幅に上回っている。特に大卒者における非経済活動ニートの割合(男女計18・9%)はOECD加盟国のなかでは最高水準である。
若者たちがニートになった理由は就業経験の有無によって異なる。就業経験があるニートは、就業時の雇用形態は正規職・非正規職ともに多く、職場の労働条件や人間関係などに満足できずに退職したケースが多い。
他方、就業経験がないニートの場合は、自分が納得できる労働条件の職場が見つからず、選考を受けても採用されないなど、就職活動が上手くいかずに断念したケースや、就職する意思が元々ないケースなどが存在する。
若者がニートになった理由は様々であるが、ニートには「職業教育の経験不足」という共通点が見られる。現代経済研究院から2015年1月に発表された報告書(キム・グァンソク「青年ニート族の特徴と示唆点」)によると、統計庁資料(2014年)を利用して分析した結果、ニートの72・1%は職業教育を受けた経験がない。他方、職業教育を受けた経験があるニートの大半は職業教育を受けた場所が民間の塾・予備校(67・4%)であり、公共機関(10・9%)や大学(3・2%)等での職業教育経験は極めて少ない。
高学歴社会となっている韓国において大卒者の非経済活動ニートの規模が大きいことを勘案すると、大学や公共機関における職業教育の内容や運営上の問題がニートを増加させる一因になっているものと思われる。
したがって、ニートに対する就職支援の効果を高めるためには、企業に対する雇用促進支援、労働部による職業訓練、大学のキャリア教育など幅広い分野から対策が必要であろう。
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