◆労働組合組織率10.2%・先進国で低水準、労使関係も二極分析◆
韓国の労使関係というと、労働組合による過激な労働争議を連想することが多いであろう。韓国における労働組合運動の成長は1987年の民主化運動の高揚がきっかけとなったが、あれから30年ほど過ぎた現在でも大規模な労使紛糾が度々発生している。
そのため、労使関係は「韓国経済のアキレス腱」と呼ばれるほど深刻な社会問題となっており、労働組合が「集団利己主義」や「労働貴族」などと批判されることも多い。
世界経済フォーラムが2016年9月に発表した国際競争力ランキング(2016~17国際競争力レポート)によると、「労使関係の協力性」の項目において韓国は138カ国中135位と最下位クラスの評価を受けている。
では韓国では組合員として労働組合に組織されている労働者はどれぐらいの規模で存在するのであろうか?
韓国の2015年の労働組合組織率は10・2%であり、先進国のなかで最も低い水準である(表参照)。韓国の労働組合組織率が低い原因としては、労働組合の中心的な組織形態が企業別組合であることが挙げられる。企業別組合には、以下のような組織力の限界性が存在する。
第一に、企業別組合は大企業正規職の組織力が高い半面、中小企業への組織化が低迷しているという点である。
雇用労働部の「2015年全国労働組合組織現況」によると、2015年の従業員300人以上の事業体における労働組合組織率は62・9%と高い水準であるが、事業場規模が小さくなるほど組織率が著しく低くなっている(100~299人の事業体では12・3%、30~99人の事業体では2・7%、30人未満の事業体では0・1%)。
労働組合運動の中心勢力である大企業正規職労組は自社組合員の待遇改善のみに要求を偏らせがちであり、自社以外の労働者の待遇改善については関心が薄いため、中小企業に組合組織化をもたらす効果が存在しないのである。
第二に、非正規労働者の組織率が極度に低い点である。
韓国労働研究院のチョン・ジェウ研究員が発表した論文(「非正規職労組加入意向と現況」『労働レビュー』2016年2月号)によると、著者が統計庁の「経済活動人口調査(雇用形態別付加調査)」を用いて雇用形態別の労働組合組織率を独自で算出したところ、2015年の場合、正規職の組織率が12・3%であるのに対し、非正規職の組織率は2・8%にすぎない。
正規職組合は非正規職の組織化に消極的もしくは否定的なケースが多く、非正規職が独自に組合を結成しようとすると企業側が組合結成を阻止するために非正規職を解雇するリスクが高まる。そのため、非正規職の組合組織化は正規職よりもはるかに厳しい困難を伴うのである。
韓国の労働組合が有する上記のような組織的特徴は、労使紛糾問題と深い関連性を有している。具体的には以下の二点が挙げられる。
第一に、大企業の労働組合は労働条件が相対的に恵まれている正規職を中心に強い組織力を有している。組合員数が多い大企業で労働争議が発生することによる国家経済へのダメージは大きい。「共に民主党」の李龍得・国会議員によると今年の労働損失日数(9月28日までの暫定推計値)が105万9000日と前年(44万7000日)を大幅に上回った(インターネット韓国日報、2016年10月5日記事)。
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