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2016/04/29

<トピックス>私の日韓経済比較論 第61回 1~3月のGDP発表                                                   大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。

◆韓国の潜在成長率から見ると不振◆

 4月26日に2016年1~3月期のGDP成長率が公表された。季節調整済前期比は0・4%のプラス、年率換算すると1・6%であり、韓国の潜在成長率からすれば不振といえる数値であった。

 需要項目別に見ると、建設投資が5・9%のプラスであるが、設備投資がマイナス5・9%、民間消費もマイナス0・3%と不振であった。

 輸出はマイナス1・7%であるが、輸入がマイナス3・5%であり、外需の寄与度は0・8%のプラスである。寄与度からみれば、今回の成長率の足を引っ張った需要項目は在庫、設備投資、民間消費であった。

 在庫のマイナス寄与が大きかった要因としては、在庫の積み上がりを背景に企業が在庫調整を行ったことが大きい。

 また、4月19日に韓国銀行は16年経済見通しの修正版を公表した。これによれば、設備投資は今年に入ってから大きく萎縮しているが、輸出不振が続き企業の投資計画が下方修正されていることが要因のひとつである。そして製造業の設備稼働率が低迷しているとともに在庫水準が高く、企業が設備の拡充に消極的になっていることも要因として挙げられる。

 また民間消費については、年初から、昨年8~12月にかけて行われた個別消費税の引き下げ、韓国版ブラックフライデー(セールによる消費喚起策)の効果が剥落したことから不振であり、この影響を受けてマイナスに落ち込んでしまったようである。

 韓国銀行は、雇用環境の改善や賃金増が民間消費の下支え要因になるとともに、乗用車の個別消費税の再引下げなどの政府の消費喚起策が継続されることも追い風となると見ている。

 一方、消費者心理の委縮を背景とした貯蓄性向の上昇、家計負債の増加を背景とした政府の元利金償還負担の拡大といった構造的な消費への逆風の存在も指摘している。この結果、韓国銀行は1月14日に公表した16年経済見通しで示した成長率を今回修正した。具体的には、16年の成長率見通しを3・0%成長から2・8%成長に下方修正して、とくに設備投資の増加率を3・8%から0・9%へと大幅に引き下げた。

 韓国経済にとって16年1~3月のGDP成長率はよくないスタートとなった。現在のところ米国経済では景気回復が続いており、これが持続することが見通されている。


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