◆ドル建て価格に転嫁せず、韓国の輸出に影響無し◆
長らく続いていた円安基調が崩れてから半年が経過した。円ドルレート(東京外国為替市場中心相場)の月中平均値を見ると、2011年7月から12年10月の間、1㌦=80円を割り込む円高がおおむね続いていたが、その後は円安が進み、15年11月には1㌦=122円54銭となった。
しかし円安基調は3年ほどで終わりを告げ、15年12月より再び円高が進み、16年4月には1㌦=109円68銭と110円を割り込んだ。そして同6月20日の東京外国為替市場の中心レートは1㌦=104円65銭と、さらに円高が進んでいる。
一方、ウォンドルレートについては、14年6月までは緩やかなウォン高が進んでいたが、それ以降はウォン安に転じ、16年5月の月中平均値は1㌦=1172㌆と14年6月と比較して15%ほどウォン安が進んだ。つまりドルに対し、円高とウォン安が同時に進んでいるわけであり、円に対してウォンは大幅に安くなっている。
そのような中、韓国の輸出は16年5月に17カ月連続でマイナスを記録するなど不振を極めている。
輸出に対しては、為替レートと主要輸出相手国の景気が影響する。韓国の輸出が不振である主な理由は、対中輸出が大幅に減少していることである。これは中国の経済が減速していることによるものであり、中国への輸出依存を強めている韓国はこの影響を強く受けているといえる。
中国の景気が再び力強く拡大する兆しは現在のところ見られないが、急速に進んでいる円高は、経済理論から見れば韓国の輸出にとって追い風になるはずである。
しかし、残念ながら円高は韓国の輸出の追い風にはなりそうもない。円高となり日本の企業がドル建て価格を引き上げれば、韓国製品の価格競争力が高まる。
韓国の輸出製品は日本との競合が多いといわれており、そうなれば韓国の輸出はプラスの影響を享受する。ではなぜ、円高が韓国の輸出にとって朗報とならないのであろうか。
これは日本の輸出企業が円高時にドル建て価格を引き上げない傾向にあることが理由である。
ドル建て価格に円高の影響を転嫁しないということは、円建ての手取りが減少することを意味し、ひいては利益の減少をもたらす。利益の減少を受け入れてまでドル建て価格を引き上げない理由は、シェアの確保をより優先しているためである。もっとも円安時にドル建て価格を引き下げることも行っていない。この企業行動は契約通貨建ての輸出物価指数からも確認でき、円高時にも円安時にも指数の変動がほとんど見られない。
今回の円高局面においても、日本企業はドル建て価格を引き上げないと見られることから、韓国企業が価格競争面で優位に立つことはない。
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