◆6月失業率3・6%と低いが、雇用の質に課題◆
韓国の経済は輸出の不振に加え、内需も今一つであり、総じて不振な状況にある。失業率は景気に遅行する、すなわち景気が後退してもすぐには悪化しない指標ではあるが、7月18日に統計庁より公表された「雇用動向」では、6月の失業率は季節調整値で3・6%と決して高い水準ではない。
日本では、2001年6月から2003年11月、また、2009年4月から2010年11月と長きにわたり失業率が5%を超えたが、韓国では4%を超えることは稀である。このようなことから、韓国の失業の定義がおかしく、実際より低く出ているのではないかと疑う主張も聞かれる。
しかしながら、韓国の失業統計は、他の先進国と同様、客観的に就業や失業の状況を把握するための定義としてILO(国際労働機関)が定めた国際基準に基づいて作成されている。よって韓国の失業者の範囲が、他の国に比べて狭いということはない。
ILOの国際基準によれば、失業者は、①就業していない(有給就業者でも自営業者でもない)、②求職活動を行っている(最近の特定期間中、有給就業または自営就業のため特別の手立てをした)、③就業が可能である(仕事があればすぐに有給就業または自営就業が可能である)、の3条件を満たすことが必要である。
韓国の失業者数は毎月行われる「経済活動人口調査」により把握される。この調査はサンプル調査であり、日本の国勢調査に相当する「人口住宅総調査」の対象世帯を母集団として、二段無作為抽出で選ばれた3万2000世帯に質問に答えてもらう。
質問に対する回答によって、回答者が、就業者、失業者、非経済活動人口のいずれに分類されるかが判断される。質問には、失業者の条件、すなわち、①~③を満たしているか判定できるものが含まれており、その回答によって失業者を特定する。そしてサンプル調査で得られた失業者数から母集団における失業者数を把握する仕組みとなっている。
よって「韓国の失業率は低いが、失業統計が恣意的であり、実際は国際的に高水準である」といった主張は正しくない。
韓国の失業率が低い理由は、景気に左右されない構造的・摩擦的失業率が低いからであり、韓国の専門家等の見解を総合すると以下の要因が考えられる。第一は失業給付である。給付金額が低いだけでなく、支給期間も短い。韓国では失業給付は手厚くないため、悪い条件でも急いで再就職する、あるいは職探しをやめる人が多く、失業者として留まる人は多くない。
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