◆早期の改定必要、」制限された差別是正効果◆
前回までのコラムでは韓国の非正規労働について期間社員、パート、間接雇用、特殊雇用といった雇用形態の観点から現状を説明してきた。政府・与党は2015年から労働改革についての議論を本格化させ、労働関係法改定案を16年に入る前に国会で通過させようとしてきたが、最大の争点が非正規職保護法である。
今回のコラムでは、2007年に導入された非正規職保護法の特徴と問題点について紹介する。
非正規職保護法は韓国の労働事情に関連する代表的な時事用語の一つであるといえる。たが、「非正規職保護法」という名称の法律が存在するわけではない。非正規職保護法は、非正規労働者を保護するために07年7月に制定された「期間制および短時間勤労者保護等に関する法律」(以下、期間制法)と、改定された「派遣勤労者の保護等に関する法律」(以下、派遣法)・「労働委員会法」の総称である。
非正規職保護法が導入された背景には、97年末の通貨危機以降、非正規労働問題が深刻化した点が挙げられる。通貨危機以降、正規職のリストラが進められる一方、非正規職への代替化が進み、韓国社会において非正規労働者の規模が拡大した。
非正規職は正規職に比べ賃金や雇用安定性など労働条件が顕著に悪く、労働や社会保険に関する法的保護も十分に受けられないなど、韓国社会の二極化を象徴するような存在となった。それを受け、政労使間の激しい対立を経ながら、非正規職保護法が導入されたのである。
非正規職保護法の重要なポイントは以下の3つである。第一に、雇用期間が2年を超える非正規労働者の無期契約化である。使用者は2年を上限(労働契約を反復更新した場合は、継続労働した総期間が2年を上限)で期間制労働者を使用でき(期間制法第4条第1項)、使用者が2年を超えて期間制労働者として使用すると、 その期間制労働者は無期契約を締結した労働者とみなされる(期間制法第4条第2項)。
第二に、2年以上使用した派遣労働者に対する直接雇用の義務化である。派遣契約期間は原則1年が上限(派遣法第6条第1項)で、派遣事業主・使用事業主・派遣労働者の合意があれば2年まで総派遣期間を延長できる(同法第6条第2項)。しかし、これに違反して2年を超えて派遣労働者を使用し続ける場合は、その派遣労働者を直接雇用しなければならない(同法第6条の2)。
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