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2016/03/25

<トピックス>経済・経営コラム 第73回 アモーレパシフィックが、アジア首位・資生堂に挑む㊤                                                     西安交通大学管理大学院 林 廣茂 客員教授

  • 西安交通大学管理大学院 林 廣茂 客員教授

    はやし・ひろしげ 1940年韓国生まれ。同志社大学法学部卒。インディアナ大学経営大学院MBA(経営学修士)課程修了。法政大学大学院経営学博士課程満了。長年、外資系マーケティング・コンサルティング会社に従事。滋賀大学、同志社大学大学院ビジネス研究科教授を経て中国・西安交通大学管理大学院客員教授。日韓マーケティングフォーラム共同代表理事。著書に「日韓企業戦争」など多数。

◆海外市場の更なる開拓が重要に◆

 韓流人気の高まりに乗って、韓国首位の化粧品メーカー・アモーレパシフィック(以下アモレ)は、国内はもちろん、中国や東南アジアでも躍進している。2020年には連結売上約1兆2000億円を達成し、資生堂(同年の目標、1兆円)を抜いてアジア首位を奪取したい。中国での成長戦略の成否がその大きな鍵の一つを握っている。「全世界のお客様の心をつかむまで挑戦を続ける」。徐慶培会長の強気の発言には根拠がある。

 2015年(1~12月)、アモレの全世界の連結売上は約5661億円で、資生堂(1~12月)8633億円の2/3だが、それぞれの国内売上はアモレ4416億円対資生堂3952億円で、アモレが資生堂を465億円上回っている。国内の消費市場は日本(4兆円)が2倍の大きさなので、アモレの韓国での存在感は圧倒的だ。

 アモレは過去4年間、国内売上を1・8倍強拡大したが、資生堂は同期間+6%に留まった。日本の市場成長が鈍化して競争は一段と激化している。特に中低価格のスキンケア化粧品の比重が高まり、ドラッグストアのセグメントが拡大した(全体の45%増)。資生堂はこの変化に対応して中低価格の有力ブランドを構築するなど、効果的な競争戦略対応ができず、国内業績が低迷した。

 アモレの連結売上・営業利益ともに成長のスピードは速く、過去4年間(12~15年)で売上高は1・7倍、営業利益額2倍で資生堂を超えている。資生堂は同じく1・3倍と1・7倍だった。資生堂の売上増は海外市場に依存している。営業利益では、アモレ914億円対資生堂443億円、資生堂の2倍強である。営業利益率は、アモレが16・1%対資生堂4・9%で、資生堂の3・3倍である。また、アモレは過去4年間で営業利益率を13・1%から16・1%まで高めたのに対し、資生堂は3・8%から4・9%への改善に留まった。

 グローバル展開で両社を比較する。15年、アモレの連結売上に占める海外の割合は22%(1245億円)で、資生堂(以下推定)の54%(4681億円)にはるかに及ばない。アモレの海外売上は、中国(約560億円)と中国を除くアジア(420億円)が中心で、全体の78%を占める。アジア8対欧米2の割合だ。アジアでは中国が45%で半分近い。欧米市場の開拓が大きく遅れている。

 一方、資生堂の海外売上は中国が最大だが(海外売上の27%、約1260億円)、その他アジア14%、米州33%、欧州24%と幅広くかつバランスが良い。ざっとアジア4対欧米6だ。アモレとの差3440億円の理由は、資生堂の欧米での売上の差の大きさ、そして、グローバル展開の歴史の長さにある。資生堂の本格的なグローバル・マーケティングは、それまでの輸出マーケティングを転換して、1980年代の初期にパリ発で、日本の「こころ」とフランスの「エスプリ」が融合したグローバル・プレミアム・ブランド「SHISEIDO」を全世界に向けて導入したのが始まりである。

 15年、自国を含むアジア全域に限って両社の売上を比較すると、アモレの5396億円に対し資生堂は5867億円で、資生堂との差はわずか470億円に縮小している。言うまでもなく、利益ではアモレが資生堂を凌駕している。


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