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2016/10/21

<トピックス>切手に見るソウルと韓国 第72回 スケトウダラ                                                         郵便学者 内藤 陽介 氏

  • 郵便学者 内藤 陽介 氏

    ないとう・ようすけ 1967年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。日本文芸家協会会員、フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を研究。

  • 切手に見るソウルと韓国 第72回 スケトウダラ

    1966年に発行されたスケトウダラの切手

 海洋水産部は11日、世界で初めてスケトウダラの完全養殖技術の開発に成功したと発表した。

 スケトウダラは韓国の伝統料理には欠かすことのできない食材で、プゴ(北魚)、ソンテ(鮮太)、マンテ(網太)、カンテ(江手、杆太)などとも呼ばれるが、一般にはミョンテ(明太)の名で知られている。ちなみに、1966年に発行された動物シリーズの切手でも、スケトウダラの名前は〝ミョンテ〟と記されている。

 ミョンテという名前の由来には諸説があるが、朝鮮王朝時代に、咸鏡道明川の太という漁師が獲った魚ということで、明太の字を当ててミョンテと呼ばれるようになったと説明されることが多い。この明太が、中国に入って〝ミンタイユー(ユーは魚)〟と呼ばれ、日本語のメンタイとなったと考えられている。ちなみに、中国地方から九州にかけての地域ではスケトウダラをメンタイと呼び、明太子は一般的なタラコのことだが、全国的には、明太子といえば辛子明太子を指すことが多い。ただし、日本の辛子明太子に近いものとされる韓国の〝明卵漬(ミョンナンジョ)〟は、タラコをトウガラシとニンニクに漬け込んだもので、日本の辛子明太子とはかなり味わいが違う。

 韓国では、年間25万㌧のスケトウダラが消費されているが、これは、海産物の中ではトップで、韓国料理でのスケトウダラの利用法も、焼き物、煮込み、チゲ、チムなど多岐にわたっている。日本でも、一時期、美肌によいとしてプゴク(干しスケトウダラのスープ)が注目されたことは記憶に新しい。

 このように、韓国の国民魚ともいうべきスケトウダラだが、近年、韓国近海で獲れるものはほとんどなく、大半はロシアなどからの輸入に頼るという状況が続いていた。

 これは1970年代、急激な経済成長と人口の増加に対応して、ノガリ(スケトウダラの幼魚)漁が解禁されたため乱獲が進んだことが大きい。

 具体的な数字で見てみると、1980年代には7万4000㌧あった韓国近海でのスケトウダラの漁獲高は、2000年代中盤には100㌧未満にまで落ち込み、2007年以降は1~2㌧と急落している。

 こうした状況に危機感を抱いた海洋水産部は、2014年、スケトウダラ復活のためのプロジェクトを開始。国立水産科学院東海水産研究所などが、天然スケトウダラの母魚1尾から受精卵53万個を確保して幼魚を育て、昨年12月、20㌢程度に成長したスケトウダラのうち200尾余を選別して、35㌢の母魚に育てた。


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