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2017/06/30

<トピックス>私の日韓経済比較論 第72回 文政権の福祉政策                                                   大東文化大学 高安 雄一 教授

  • 大東文化大学 高安 雄一 教授

    たかやす・ゆういち 1966年広島県生まれ。大東文化大学経済学部社会経済学科教授。90年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、00年在大韓民国日本国大使館二等書記官、00~02年同一等書記官。内閣府男女共同参画局などを経て、07~10年筑波大学システム情報工学研究科准教授。

◆高齢者の貧困改善へ社会保障引き上げ議論を◆

 文在寅大統領の任期中に起こる経済構造変化といえば、韓国の高齢化のスピードが本格的に早まることである。

 朝鮮戦争の休戦後、1955年から、韓国ではベビーブームが始まった。1960年の出生率は日本のベビーブーム期の4・32よりはるかに高い6・0である。さらに、ベビーブームが一服したと考えられる1970年の出生率も4・53であり、日本のベビーブーム期とほぼ同水準である。つまり韓国では日本のベビーブーム期を超える、あるいは匹敵する高出生率の時期が10年以上も続いた。

 ベビーブームが始まった1955年生まれの人が65歳に到達するのが2020年であり、その後、高出生率時代に生まれた人が順次高齢者の仲間入りをしていく。

 高齢化のスピードを高齢化率の上昇幅で見ると、2000年代は年平均で0・36㌽であったものが、2010年代には0・48㌽、2020年代には0・89㌽にまで早まっていく。そして2030年代も0・83㌽とスピードは速く、2040年代に0・53㌽とようやく高齢化のテンポが緩くなる。この結果、2020年には15・6%である高齢化率が、2040年には32・8%にまで高まることが予測されている。

 文在寅大統領は、今後の高齢化を見据えて、今後の社会保障と国民負担の在り方を早急に議論する必要がある。

 大統領は公約で、基礎年金の増額、国民年金の所得代替率引き上げを掲げた。確かに韓国における高齢者の貧困問題は深刻である。高齢者世帯の相対貧困率は40%を大きく超えており、全世帯が10%を若干超えている程度であることを勘案すれば、相当程度高い水準である。

 これは国民年金が導入されてから時間が経っておらず、年金制度がまだ成熟していないことに起因するが、年金制度が成熟しても所得代替率が40%にまで引き下げられているため、十分な年金を受け取ることは期待できない。つまり、高齢者の貧困を改善するためには、年金水準を高めることが必要である。

 一方、急速に進む高齢化により、年金水準を高めない場合でも将来的には財政が破たんすることが予測されている。国会予算政策処によれば、高齢化が進むことにともない、完全な税方式で運営されている基礎年金、支払いの一部に国費が投じられている国民健康保険への支出が増加することにより、現在の制度を維持した場合でも国家債務比率は151・8%に高まり、財政の持続可能性が失われる。

 よって、現在の「低負担」を改めて「中負担」としなければ財政は持続可能でなくなる。さらに、高齢者の貧困を改善するため、現在の「低保障」を「中保障」にした場合には、「中負担」どころか「高負担」にせざるを得ない。

 文在寅大統領が示しているように、


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