◆付加価値税率の引き上げが不可避◆
韓国政府が2018年度予算案を取りまとめた。2018年度予算額は2017年度と比較して7・1%増加しているが、これは2018年の名目成長率の見通し値である4・5%を上回っている。
韓国の伝統的な財政運営方針は事後的な均衡財政であり、統合財政収支が赤字に陥った場合にはその翌年から均衡が達成されるまで一般会計の歳出を緊縮基調にする。
例えば、1998年には通貨危機後の景気後退のため大幅な税収減となったことから統合財政収支が大きな赤字となったが、政府はこれを受けて財政再建に努めた。具体的には、統合財政収支が黒字に転じるまで一般会計の歳出の伸び率を名目成長率より2%低く抑えることとし、実際にこれをやり遂げた。
そして最近では、統合財政収支から大きく黒字である年金基金を除いた管理対象収支を目標にするなどより厳しい財政規律を課していた。この努力もあって韓国の国家債務の対GDP比率は低水準にとどまっている。国家債務の対GDP比率は2015年で37・9%であり、この水準はOECD加盟国の大半の国々よりも低い。
しかし韓国の問題はこれから急速に高齢化が進むことである。韓国ではベビーブーム世代である1955年から1963年の間に生まれた人々が65歳を超え始めることから、2020年頃から高齢化に拍車がかかる。2017年の高齢化率は13・8%である。しかし、2016年に統計庁が公表した将来人口推計によれば、高齢化率は2018年には14%、2025年には20%を超え、2065年には42・5%に達することが予想されている。これは緩やかに高齢化が進んだ欧米諸国はもとより、急速な高齢化の代名詞ともいえる日本をも上回るスピードである。
ただし、これまでの控えめな福祉水準を維持し、かつ若干の負担増を行えば、財政構造の健全性は辛うじて保たれる。国会予算政策処が2016年に公表した長期財政見通しによれば、高齢化が進むことによる負担増により、現在の制度を維持した場合には国家債務の対GDP比率は151・8%に高まり、財政の持続可能性が失われる。ただし2015年に18・5%である租税負担率(対GDP比)を、高齢化に伴う福祉支出増大に対応し2060年までに22・6%に高める場合には、2060年の国家債務比率は80・5%と持続可能な水準にとどまる。
韓国の社会保障の特徴は「低負担」である。よって今後、福祉水準を高めなければ、大きな負担増を伴わずに財政の健全性は維持可能である。しかし、新政権の政策や来年度の予算案を見れば財政破綻の第一歩を踏み出してしまった印象が拭えない。日本の高齢化率が現在の韓国の水準程度に低かった1990年、日本は特例公債の発行から脱却できたなど財政構造は現在よりはるかに健全であった。しかし、
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