◆大きい高賃金労働者と低賃金労働者の格差◆
韓国では1987年の民主化運動の高揚を契機に賃金が上昇し、いわゆる「高賃金」をめぐる問題が社会的イシューとなってから、30年以上経過している。韓国社会では正規職の高賃金の問題について従来から指摘されてきたが、最近では非正規労働者や中小企業労働者の賃金水準に影響を及ぼしやすい最低賃金の大幅な引き上げについても賛否が分かれている。
はたして韓国の賃金は先進国のなかでも高い水準といえるのか?
また、「高賃金」問題の本質は何であろうか?今回のコラムから賃金をめぐる諸問題について紹介する。まず今回は、韓国の賃金水準について国際比較を行いながら解説する。
表1の上段は先進国における2016年時点の平均年間賃金である。韓国は3万2399㌦であり、表1のなかでは最も少ない金額である。OECD統計によると、韓国の平均年間賃金は35カ国中24位と中下位に位置しており、先進国のなかでは低い水準にある。したがって、平均年間賃金を見る限りでは、韓国が国際的に高賃金とは言いがたい。
ではなぜ韓国社会では高賃金の問題が注目を浴びるのか?
第一の理由は、大企業正社員の賃金が国際的に高い点である。表2は韓国と日本の自動車メーカーにおける賃金水準と生産性を表したものである。韓国の完成車メーカー5社の年間平均賃金は9213万㌆であり、トヨタ(9104万㌆)よりも高い。他方、1台生産時の投入時間は現代が26・8時間であり、トヨタ(24・1時間)よりも長くなっている。つまり、韓国の自動車メーカーはトヨタに比べて生産性が低いにもかかわらず高賃金なのである。
第二の理由は、賃金格差の問題に関連している。大企業正規職と中小企業・非正規労働者との賃金格差が韓国社会の二極化を端的に表しているが、国際比較を行うとどうであろうか?
表1の下段は2015年時点の先進国におけるフルタイム労働者の賃金格差を表したものである。表の数値は賃金上位10%労働者の賃金を賃金下位10%労働者の賃金で割った数であるが、韓国は4・59であり、米国(5・04)に次ぐ高さとなっている。OECD統計によると、数値が公表されているOECD加盟国(23カ国)のうち韓国は3番目に高い数値である。したがって、韓国における賃金格差が国際的にとても大きい。
これらの統計結果をまとめると、
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