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2021/02/12

<トピックス>切手に見るソウルと韓国 第121回 民族切手シリーズ                                                  郵便学者 内藤 陽介 氏

  • 切手に見るソウルと韓国 第121回 民族切手シリーズ                                                   郵便学者 内藤 陽介 氏

    ないとう・ようすけ 1967年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。日本文芸家協会会員、フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や地域のあり方を読み解く「郵便学」を研究

  • 切手に見るソウルと韓国 第121回 民族切手シリーズ                                                   郵便学者 内藤 陽介 氏

    1967年9月15日に発行された、ノルティギを題材とした〝民族シリーズ〟の切手

 今年のソルラル(旧正月)は2月12日。ちょうど本紙の発行日だ。

 韓国の伝統的な正月行事といえば、やはり、ノルティギ(板跳び)ではないだろうか。

 ノルティギの由来は必ずしも定かではないが、高麗時代に始まり、朝鮮王朝時代に現在のようなスタイルが確立されたものと考えられている。

 朝鮮王朝時代と比べて、高麗の時代は女性の社会的な地位が高く、当時の女性は、夫と死別後は再婚が可能で、遺産の相続も息子と娘の区別がなかった。活動的な女性も多く、女性が乗馬や撃毬(ポロに似た球技)などを行うことも珍しくはなかったので、ノルティギもそうした環境の下で生まれたのだろう。

 ところが、朝鮮王朝時代になり、儒教(特に朱子学)道徳が社会的に深く浸透し、両班階級の女性は外出も制限されてしまった。

 こうした中で、ノルティギは、女性たちが塀の外の世界や男性をうかがう手段として、あるいは、政変などで投獄される両班も多かったため、高い垣根の向こうに閉じ込められている獄中の夫を見ようとする妻が、同じく罪人の妻を誘って板の上で交互に飛びながら夫の顔を見るための手段として始まったという伝承が浸透し、女性限定の遊びとみなされるようになった。


つづきは本紙へ