儒教が広く浸透してきた東アジアでは、虎は親孝行な人間を助けたり、人間から受けた恩を返したりするとして、孝と恩の象徴とされてきたが、それとは別に、朝鮮の伝統的な民間信仰でも重要な動物であった。
韓国語では、日本語でいう「むかしむかし」に相当する言い回しとして、「虎が煙草を吸っていた頃」というのがある。神話の類に要らぬツッコミを入れるのは無粋なことと重々承知の上でいうと、コロンブスが新大陸発見と同時に喫煙の習慣をヨーロッパにもたらしたのは1492年のことで、朝鮮半島には、1618年、日本経由で薬草として伝わったとする説が有力である。その後、喫煙の習慣は急速に普及し、17世紀に朝鮮を訪問したオランダ人のハーメルは、朝鮮では老若男女がこぞって喫煙しているとの記録を残しているから、「虎が煙草を~」という言い回しもこの頃に生まれたのだろう。
ただし、虎が古くから朝鮮民族にとってなじみの深い動物だったことも事実で、虎と熊が人間になることを願い、
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